オヤジ達の白球 6~10話
急流で知られるこの川は、大きな台風が来るたび、被害を生んだ。
昭和の時代。5度にわたり堤防が決壊している。
とりわけ1947年にやってきたカスリーン台風は、関東平野で
1000名あまりの死者を出した。
そのうち。桐生市で146人、隣接する足利市で319人の死者行方不明者が出た。
渡良瀬川は、関東最大の被害地になった。
そんな昔をすっかり忘れたように、いまは土手一面にタンポポが咲いている。
タンポポは何年でも生きつづける「多年草」。
邪魔するものがないかぎり、一本の根をどこまでも地中へ伸ばす。
通常で50㌢。なかには1㍍をこえるというから驚きだ。
タンポポの花言葉は4つ。
「愛の神託」「神託」「真心の愛」「別離」の4つ。
そのうちの別離は、怠け者の南風と少女の話に由来している。
黄色い髪をした美しい少女に、南風が一目惚れした。
もともと惚れやすい南風は、黄色い髪の少女に夢中になった。
毎日少女を見つめつづけたが、いつのまにか少女は白髪の老女に
変ってしまった。
悲しみのあまり南風が、ふっと大きな溜息をついた・・・
その瞬間。ため息に飛ばされて、白髪の老女にかわったたんぽぽが大空へ
次から次へ舞い上がっていく。
「花として咲くのは、せいぜい7日から10日。
花粉を落とし、いったんしぼんでから、1ヶ月ほどで真っ白の綿毛にかわる。
飛び始める季節は4月から6月の下旬。
そうか。もう、タンポポが飛びはじめる季節になったんだ・・・」
いっせいに綿毛にかわるわけではない。
元気に咲き誇るたんぽぽの中。ところどころに早い綿毛が目立つ。
作品名:オヤジ達の白球 6~10話 作家名:落合順平