ライダ~~~! 再会っ!
「むむっ? どうした、死神博士、今日は怪人を連れていないのか?」
ショッカーが現われたとの通報に現場に駆けつけたライダーチーム、しかし、いざショッカーと対峙すると死神博士と戦闘員だけで怪人がいない。
「怪人か? それならここにおるわ、いくらでもな」
死神博士は傍らに置いた賽銭箱のようなものを軽く叩いてみせる。
「なんだ? その箱は……『再会箱』と書かれているが」
「そう、これは再会箱だ」
「それはなんなのだ?」
「知らぬとあれば説明してやろう、これは再会したい者の名前を紙に書いて入れると望みを叶えてくれると言う箱なのだ、ただし……再会できるのは生涯一人だけ、再会できるのは一度だけ、再会後は関係を続けようとしてはならない……この3つのルールがあるがな」
「要するに不思議箱というわけか、だがそこに怪人が潜んでいるようには思えないが?」
「わからぬか? つまり貴様らに倒された怪人を召還できるということだ」
「それを信じろと?」
「信じる信じないは貴様らの勝手だ、だが、信じずに吠え面をかくのも貴様らだ」
「ちょっと待て、再会できるのは生涯一人だけ、再会できるのは一人だけなのだろう? だったらその箱の力が本物だとしても怪人は一人しか召還できないのではないかな?」
「ははは、ここに戦闘員どもがいるだろう? 一人が一体を呼び出したらどうなる?」
「うっ……まさか……」
「戦闘員は20人、ワシも加えて21人だ」
「つまりそれは……」
「そう、今からここに21体の怪人が現れる、さっき全員に再会したい怪人の名前を書いて入れさせたからな……おお! 早速現れたか、かっぱ男」
「そいつは貴様が?」
「そうだ、ほらほらライダー、きゅうりの香りが漂い始めただろう? バッタのDNAを持つ貴様はこの香りに抗えるかな?」
「う……くそっ……惹き付けられる……」
「ライダー! しっかりしろ!」
「すまん、みんな、だが、私はこの香りには……」
「今だ! かっぱ男! ライダーを襲うのだ!」
死神博士は勢い込んで命令するが、かっぱ男はウンコ座りで煙草をふかしている。
「……嫌ですよ……」
「な、なんだと!?」
「だって俺はライダーに食われたじゃないですか、攻撃力だって皿手裏剣しか与えてくれなかったし……もう一回ライダーに食われるなんてのは御免ですよ、俺はもう一回死にましたからね、もうあんたの言う事を聞かなきゃならない義理もないです……」
「な、なんだと?」
「ははは、死神博士、貴様のその人望のなさが命取りのようだな、貴様ほど身勝手で薄情なら誰もついては来ないのではないかな?」
「う、うるさい! まだ20体の怪人が控えていることを忘れたかっ!」
「忘れちゃいないさ、だが、どうやら貴様の思惑通りには行かないようだぞ……見ろ」
現場に次々と現れたのは怪人ではなかった。
「ユキオ、達者かい? ショッカーなんかに入ってどれだけ心配したか」
「母さん……ごめんよ、親不孝な息子だよな」
「あたしと父さんはもうこの世にいないけど、弟のユキヒロが田んぼを耕してくれてるんだよ、お前も……」
「うん、母さん、そうするよ、俺、すっかり目が覚めたよ……」
「あら? ヒロシ君?」
「あ、ユカちゃん……本当に会えた」
「覚えているわよ、告ってくれた時のこと……あなたを嫌いじゃなかったの、でもあの時は先輩に恋しちゃってて……」
「その先輩とは?」
「ふられちゃった……あの時ヒロシ君に『お願いします』って言っていたら……でももう遅いわね……」
「どうして?」
「去年結婚したの、できちゃった婚……」
「おう! タカシ」
「あ、兄さん」
「お前なぁ、本当にショッカーに入ったんだな……今に命を落とすぞ」
「だけど兄さん、俺みたいな前科者を雇ってくれるところは他になかったんだ、待遇は悪くないし……」
「バカヤロウ! だからって罪を重ねてどうするんだ! 日本じゃ第一次産業の担い手は不足してるんだ、心を入れ替えて農業でも漁業でもやればいいじゃないか、受け入れてくれる所はきっとあるはずだ」
「そ……そうだね……兄さん……」
いたるところで感動の再会が繰り広げられる。
「こ、こんなはずでは……」
「ははは、誰も怪人など呼び出さなかったようだな、一生に一度、一人だけにしか再会できないというのに怪人の名前を書く者などいるものか」
「く……くそっ……ん? お前は! モグラ男!……ははは、ライダーよ、ワシに忠誠を示す者が一人はいたようだな」
高笑いする死神博士だが、マッスルが冷たい微笑を投げかける。
「それはどうかな?」
「マッスル! いや、納谷! この裏切り者めが! 貴様、何が言いたいのだ!」
「モグラ男……いや、中川の名前を書いた紙をその箱に入れたのは俺だ」
「な……いつの間に……」
「クナイに結びつけてあたしが投げ込んだの、この位の距離で的は外さないわよ」
「レディ9か……貴様らはいつだって……」
「ふたり揃って一人前? それには同意するわよ、でもね、その一人前は100人力なのを忘れてもらっちゃ困るわ」
「だが、モグラ男を呼び出したのは貴様らの失策ではないのかな? モグラ男はショッカーの怪人、脳改造も施した、ワシの命令に背く事はないぞ」
「それもどうかな? あの時、確かに俺と中川は戦った、だがな、中川は戦いの最中に自分の心を取り戻して洞窟の入り口を塞いだ岩を砕いてくれたんだよ、お前が中川に埋め込んだ自爆装置でな」
「な……何だと!」
「自爆を強要するような上司に忠誠を誓う者がいるとでも思うか?……おい、中川、お前もこっちの仲間にならないか? 一緒にショッカーと戦おうぜ」
だが、中川……モグラ男は寂しそうに顔を振った。
「納谷先輩、再会箱のルールは聞いたでしょう?」
「え? あ……」
「再会後は関係を続けようとしてはならない……」
「そうか……そうだったな……」
「生涯に一度、一人だけ……それを知っていながら先輩が俺の名前を書いてくれて嬉しかったです……仲間にはなれません、なれませんけど、こんな俺を気にかけてくれた先輩の役に立ちたいって思いは確かなものです……聞こえますか?」
「聞こえるって、何が?」
「あなた! 微かだけど中川さんの体の中から電子音が……」
「しまった! 自爆装置が作動していたのか」
「そうなんです、結局俺ってこういう運命なんですよね、悲しいけど……でも、せめて運命の矛先は自分で決めます」
「な……中川……」
「今度こそお別れです、先輩……お元気で、必ずショッカーを倒して下さいね」
モグラ男こと中川は死神博士に向って突進して行く。
「く、来るな! 血迷ったか! モグラ男!」
「違う! 俺はモグラ男なんて名前じゃない! 中川一平だ! 冥土の土産に憶えて行きやがれ!」
岩をも砕く大爆発、死神博士がいた場所には大きな穴が……。
そして、司令官を失った戦闘員たち……いや、もう『元戦闘員』か……彼らは戦闘スーツを脱ぎ捨ててそれぞれがそれぞれの居るべき場所へ向って歩き出した。
「中川……」
地面に膝をついてうな垂れるマッスル、そして寄り添うレディ9……マッスルの肩をライダーマンとライダーがそっと叩いた。
ショッカーが現われたとの通報に現場に駆けつけたライダーチーム、しかし、いざショッカーと対峙すると死神博士と戦闘員だけで怪人がいない。
「怪人か? それならここにおるわ、いくらでもな」
死神博士は傍らに置いた賽銭箱のようなものを軽く叩いてみせる。
「なんだ? その箱は……『再会箱』と書かれているが」
「そう、これは再会箱だ」
「それはなんなのだ?」
「知らぬとあれば説明してやろう、これは再会したい者の名前を紙に書いて入れると望みを叶えてくれると言う箱なのだ、ただし……再会できるのは生涯一人だけ、再会できるのは一度だけ、再会後は関係を続けようとしてはならない……この3つのルールがあるがな」
「要するに不思議箱というわけか、だがそこに怪人が潜んでいるようには思えないが?」
「わからぬか? つまり貴様らに倒された怪人を召還できるということだ」
「それを信じろと?」
「信じる信じないは貴様らの勝手だ、だが、信じずに吠え面をかくのも貴様らだ」
「ちょっと待て、再会できるのは生涯一人だけ、再会できるのは一人だけなのだろう? だったらその箱の力が本物だとしても怪人は一人しか召還できないのではないかな?」
「ははは、ここに戦闘員どもがいるだろう? 一人が一体を呼び出したらどうなる?」
「うっ……まさか……」
「戦闘員は20人、ワシも加えて21人だ」
「つまりそれは……」
「そう、今からここに21体の怪人が現れる、さっき全員に再会したい怪人の名前を書いて入れさせたからな……おお! 早速現れたか、かっぱ男」
「そいつは貴様が?」
「そうだ、ほらほらライダー、きゅうりの香りが漂い始めただろう? バッタのDNAを持つ貴様はこの香りに抗えるかな?」
「う……くそっ……惹き付けられる……」
「ライダー! しっかりしろ!」
「すまん、みんな、だが、私はこの香りには……」
「今だ! かっぱ男! ライダーを襲うのだ!」
死神博士は勢い込んで命令するが、かっぱ男はウンコ座りで煙草をふかしている。
「……嫌ですよ……」
「な、なんだと!?」
「だって俺はライダーに食われたじゃないですか、攻撃力だって皿手裏剣しか与えてくれなかったし……もう一回ライダーに食われるなんてのは御免ですよ、俺はもう一回死にましたからね、もうあんたの言う事を聞かなきゃならない義理もないです……」
「な、なんだと?」
「ははは、死神博士、貴様のその人望のなさが命取りのようだな、貴様ほど身勝手で薄情なら誰もついては来ないのではないかな?」
「う、うるさい! まだ20体の怪人が控えていることを忘れたかっ!」
「忘れちゃいないさ、だが、どうやら貴様の思惑通りには行かないようだぞ……見ろ」
現場に次々と現れたのは怪人ではなかった。
「ユキオ、達者かい? ショッカーなんかに入ってどれだけ心配したか」
「母さん……ごめんよ、親不孝な息子だよな」
「あたしと父さんはもうこの世にいないけど、弟のユキヒロが田んぼを耕してくれてるんだよ、お前も……」
「うん、母さん、そうするよ、俺、すっかり目が覚めたよ……」
「あら? ヒロシ君?」
「あ、ユカちゃん……本当に会えた」
「覚えているわよ、告ってくれた時のこと……あなたを嫌いじゃなかったの、でもあの時は先輩に恋しちゃってて……」
「その先輩とは?」
「ふられちゃった……あの時ヒロシ君に『お願いします』って言っていたら……でももう遅いわね……」
「どうして?」
「去年結婚したの、できちゃった婚……」
「おう! タカシ」
「あ、兄さん」
「お前なぁ、本当にショッカーに入ったんだな……今に命を落とすぞ」
「だけど兄さん、俺みたいな前科者を雇ってくれるところは他になかったんだ、待遇は悪くないし……」
「バカヤロウ! だからって罪を重ねてどうするんだ! 日本じゃ第一次産業の担い手は不足してるんだ、心を入れ替えて農業でも漁業でもやればいいじゃないか、受け入れてくれる所はきっとあるはずだ」
「そ……そうだね……兄さん……」
いたるところで感動の再会が繰り広げられる。
「こ、こんなはずでは……」
「ははは、誰も怪人など呼び出さなかったようだな、一生に一度、一人だけにしか再会できないというのに怪人の名前を書く者などいるものか」
「く……くそっ……ん? お前は! モグラ男!……ははは、ライダーよ、ワシに忠誠を示す者が一人はいたようだな」
高笑いする死神博士だが、マッスルが冷たい微笑を投げかける。
「それはどうかな?」
「マッスル! いや、納谷! この裏切り者めが! 貴様、何が言いたいのだ!」
「モグラ男……いや、中川の名前を書いた紙をその箱に入れたのは俺だ」
「な……いつの間に……」
「クナイに結びつけてあたしが投げ込んだの、この位の距離で的は外さないわよ」
「レディ9か……貴様らはいつだって……」
「ふたり揃って一人前? それには同意するわよ、でもね、その一人前は100人力なのを忘れてもらっちゃ困るわ」
「だが、モグラ男を呼び出したのは貴様らの失策ではないのかな? モグラ男はショッカーの怪人、脳改造も施した、ワシの命令に背く事はないぞ」
「それもどうかな? あの時、確かに俺と中川は戦った、だがな、中川は戦いの最中に自分の心を取り戻して洞窟の入り口を塞いだ岩を砕いてくれたんだよ、お前が中川に埋め込んだ自爆装置でな」
「な……何だと!」
「自爆を強要するような上司に忠誠を誓う者がいるとでも思うか?……おい、中川、お前もこっちの仲間にならないか? 一緒にショッカーと戦おうぜ」
だが、中川……モグラ男は寂しそうに顔を振った。
「納谷先輩、再会箱のルールは聞いたでしょう?」
「え? あ……」
「再会後は関係を続けようとしてはならない……」
「そうか……そうだったな……」
「生涯に一度、一人だけ……それを知っていながら先輩が俺の名前を書いてくれて嬉しかったです……仲間にはなれません、なれませんけど、こんな俺を気にかけてくれた先輩の役に立ちたいって思いは確かなものです……聞こえますか?」
「聞こえるって、何が?」
「あなた! 微かだけど中川さんの体の中から電子音が……」
「しまった! 自爆装置が作動していたのか」
「そうなんです、結局俺ってこういう運命なんですよね、悲しいけど……でも、せめて運命の矛先は自分で決めます」
「な……中川……」
「今度こそお別れです、先輩……お元気で、必ずショッカーを倒して下さいね」
モグラ男こと中川は死神博士に向って突進して行く。
「く、来るな! 血迷ったか! モグラ男!」
「違う! 俺はモグラ男なんて名前じゃない! 中川一平だ! 冥土の土産に憶えて行きやがれ!」
岩をも砕く大爆発、死神博士がいた場所には大きな穴が……。
そして、司令官を失った戦闘員たち……いや、もう『元戦闘員』か……彼らは戦闘スーツを脱ぎ捨ててそれぞれがそれぞれの居るべき場所へ向って歩き出した。
「中川……」
地面に膝をついてうな垂れるマッスル、そして寄り添うレディ9……マッスルの肩をライダーマンとライダーがそっと叩いた。
作品名:ライダ~~~! 再会っ! 作家名:ST