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炬善(ごぜん)
炬善(ごぜん)
novelistID. 41661
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黄泉明りの落し子 三人の愚者【後編】

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 ヌーマスは目覚めていた。
 つい先ほどのことではない――最初のほうから彼は、覚醒していたのだ。
 全員が静まり、しばらくした後、若者が亡霊のようにふらふらと立ち去ったことも。その後を、悪夢にうなされたかのように跳ね起きたニコールが、そっと追いかけていったことも。この不敵な男は、狸寝入りのままに把握していた。

「何やら、面倒なことになってるみたいじゃねえの。どれ――」
 呟き、自身の杖をたぐり寄せると、厄介ごとの様子を探りに行こうと立ち上がった。

 彼はすぐに、気がついた。
 ――匂う。 
 彼は屈みこみ、地面にあったあるモノを手にした。
 それを手放す。
 続いて彼は、目星をつけた。
 また、あるモノに。

 ヌーマスは顔を上げた。その口元は、固く結ばれていた。
 皮肉めいた軽口が出る唇と同じものとは、思えなかった。
 目が覆い隠されても明白な感情――静かな怒り。
 空気の中のかすかなニオイを辿るかのように、鼻をスンスンと鳴らした。
 
「おいおい、おい……」
 ヌーマスはクククッと笑みを零した。
 長く、長く。その音の不気味な振動が、静穏な森に響く。
「まっこと、奇縁ってやつだねえ…」