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炬善(ごぜん)
炬善(ごぜん)
novelistID. 41661
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黄泉明りの落し子 三人の愚者【後編】

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『あんたは本当――いい奴だよ』


 ルヴェンは、眼を見開いた。
 ヌーマスが遺した剣を、再び手放した。
 
「いいえ」
 ルヴェンは、一人ごちた。
「私は――……」

 先ほどまでは夜のはずだったにも関わらず、木々の隙間から、日が差し込んでいた――黄昏の陽光が。
 
 遠のいてこそいるが、唸り声は止んではいない。
 だが、静穏な森を、どこからともなく潮風が駆け抜けていた。
 それは、木々を揺らし、草葉を揺らした。
 草木の囁きが、波立つ中、立ち尽くすルヴェンの黒い法衣も揺れた。

 彼から離れた背後にて、ケモノのたてがみも――それを駆る少女の髪もまた、揺れていた。



            ★終わり