小説が読める！投稿できる！小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ！

エイブラハムは自分の思いが内藤と梓のためを思っているからだと強調していた。

「エイブラハムさん、隠していることがありませんか？」

「内藤さん、それはどういうことを言うのでしょうか？」

「今頃これからいう話を日本にいるアンドロイドが記者たちに告白していると思いますが、在日米軍が誤射という事を理由にしてまで墜落させた本当の理由はあなたの国に関係があることだったのではありませんか？」

「ええ？内藤さんの言われる意味がよく解りませんが」

「そうですか、では言いましょう。85年の夏アメリカは秘密裡にイスラエル政府に対して核ミサイルの弾頭部分を軍事的に供与する約束をしました。そして、日本経由で迂回させて関係国からの目を逸らすことを考えたのです。
しかし、悪いことは出来ません。梓の父親でジャーナリストだった枇々木浩介さんは、その情報をキャッチし、おそらく核弾頭が厚木基地からそう遠くない場所に保管されているだろうことをジャーナリスト仲間であった私の父親、内藤義男に伝え証拠としての捜索を依頼したのです。その後のことは言わなくても解りますよね？」

エイブラハムは言葉を失った。
そして大きくため息をつくとゆっくりと返事をした。

「内藤さんの言われることが万が一に真実だとして、私がその取引に関わっていたと言われるのでしょうか？」

「万が一ではありませんよ。私が拘束されたときに犯人側のトップから聞いた話ですから。彼はまさか日本へ私がアンドロイドとして入国して聞いた話を記者たちの前で話すとは思わなかったでしょうね。今頃組織の中で危なくなっているかも知れません。気の毒だけと自業自得です。エイブラハムさんが直接取引に関係しているとは年齢からして起こり得ません。大使として日本へ派遣されている中で、遺族会が控訴をしている現状と私と梓との接点がやがて見つかるだろう危険を察知して、わざと引き合わせて自分の手の中に入れようとしたと考えています」

「イスラエルは確かに核兵器を開発して、いわんや実戦で使用して国を破滅させました。何と言われても責任は我々にあることは明白です。
しかし、そのこととアメリカ軍から秘密裡に核弾頭を譲り受けたという事実は別問題です。アメリカとの軍事同盟国関係にあったイスラエルが核兵器を希望して購入することには正当性もありました。イランの核開発が進んでいたからです」