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枯花飄々

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躰ががむしゃらに動くことを願っていた。それに対し、やる気と言おうか、それは一向に体を動かそうとしない。床に接した右頬が涙で濡れ始めた。一二センチの攪拌されたままの花瓶の水がゆっくりと胎動するかのように動いていることだけが確かに思えた。
他のすべては、曖昧で輪郭のない無実態となって浮遊しているようだった。




気付けば草の上にいた。
季節感が全くない森のような場所で右頬を草につけ、寝そべっていた。頭上から暈の外周のような、煌めく太陽光が差し込むと二つのガラス玉から伸びていた二つの涙跡が渇き始め、肌が軋むように縮んでいった。
孵化するようにむくむくと起きあがり、顔を強くこすると向こうに何かがあった。森の風景には似合わないない白い立方体のものが自然に溶け込むことなく、そこにあった。
その濁りのない白色と大きさ。そして根拠のない推測から、この箱があの部屋だと分かった。そして改めてその箱を外から見ると、出口も入り口もない、窓もない、換気扇もない、水道管もない、簡素で御粗末な箱だったということがよくわかる。
同時に心の奥底に溜まったままの沈殿物を感じた。しかしその攪拌されたままだった沈殿物が静かにそこに溜まっていることも感じた。何が抑えたのか、それを探そうと勘がえもしたが、なぜか急に帰らなければならないと思い、潺湲たる川の音を辿りに私の家への帰途を飄々と辿り始めた。

そんな記憶を思い出している。






 

作品名:枯花飄々 作家名:晴(ハル)