宿題だよ! ライダー!
しかも力が発動するにはある程度の時間がかかる、その間に多勢で襲い掛かればレディ9一人では守りきれない。
その意味では地獄大使の作戦は的を射ている、そしてそれは成功するかのように見えた、しかし……。
「ギャッ」
「グッ」
「グエッ」
今、正に襲い掛かろうとした戦闘員たちが次々に動きを止める。
「どうした! 早くかからんか!」
地獄大使が檄を飛ばすが、後続の戦闘員たちも次々と止まってしまう。
「こ、これは……戦闘員どもが凍っている……どういうことだ!」
愕然とする地獄大使にも強烈な冷気が襲い掛かる、が、さすがに大幹部、なんとか冷気を払いのけて叫んだ。
「誰だ! 邪魔をしているのは!」
すると、白い髪、白い肌、白い和服姿の女が舞い降りて来た。
「あら、死神博士じゃないのね、あいつを凍らせてやろうと思ったのに残念だわ」
「だ、誰だ!?」
「あたし? 言わずと知れた雪女よ」
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
ミーティングから数日後のことだった。
「ねぇ、面白そうじゃない? 一緒に行こうよ」
「どうしようかなぁ……」
数日後、考え込むばかりの晴子の気分を変えようと、志のぶが誘ったのは『第一回怖いもの選手権』。
おやっさんが商工会の寄り合いでチケットを入手して志のぶに託してあったのだ。
「お雪さんも出場するんだって」
「え? そうなの?」
お雪さんとは雪女のこと、雪山での闘いで対峙したものの、晴子がその昔夫であった巳之吉の霊と会わせてあげた事でショッカーに協力するのをやめ、晴子に感謝しながら山に帰って行ったと言う経緯がある、いわば友人なのだ。
「それなら行くわ」
晴子の顔に少し明るさが戻った。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「惜しかったね、もう少しで優勝だったのに」
「でも、思わずしちゃったこととは言ってもルール違反はルール違反だからね、第二回があったらまた出るわ」
「うん、次こそ優勝だね」
『第一回怖いもの選手権』は観客の電子投票で順位を決めるコンテスト、お雪は番町皿屋敷のお菊と優勝を争う高得点を挙げたのだが、あと少しでトップに立てると言う所で得点が伸びなくなり、思わず客席に向って冷気を吐いてしまった、そして『観客への直接的働きかけは禁止』と言うルールに触れて失格になってしまったのだ、そのままでも僅差の二位は間違いなかったのだが。
「ところで、あなたのほうこそ浮かない顔してない? あたしにできることがあったら何でも言って、あの時は迷惑をかけたのに巳之吉の霊にも会わせてくれたんだもの、できることがあったら何でもしてあげるわよ」
「あ……」
「そうか……」
その言葉を聞いて、志のぶと晴子は思わず顔を見合わせた。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「くそっ! とんだ邪魔者が……ええい! 退け! 今回の作戦は失敗だ、一旦退いて体勢を整えるぞ!……今回は思わぬ邪魔が入ったがワシは諦めんぞ、世界征服を果たすにはまず貴様らライダーチームを倒さねばならん! また会おう、その時こそ貴様らを叩き潰してくれるわ!」
もとよりこの襲撃はライダーチームを、とりわけアベノセイコをおびき出すためのもの、地獄大使は思い切り良く兵を退いた。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「ありがとうお雪さん、おかげで助かったわ」
「これ位なんでもないわ、でもその代わり、また巳之吉の霊とね……それに子供たちの霊にも会いたいわぁ」
「お安い御用よ」
セイコと雪女は顔を見合わせてニッコリとしたがレディ9は少し思案顔。
「でも、地獄大使もバカじゃないわ、今度は対策を打ってくると思うの」
だが、その懸念もお雪が払った。
「日本にいる妖怪はあたしだけじゃなくてよ、ショッカーが防寒対策をしてきたら火車とか狐火を呼べば良いのよ、かまいたちとか塗り壁とかも役立ちそうじゃない?」
「確かに心強いわね、でも、協力してくれるかしら?」
「それなら心配ないわ、ショッカーの大願は世界征服でしょ? それって事は日本も征服しようとしてるのよね、日本に住む妖怪はみんなこの日本を愛してるもの、協力してくれるわよ……これ、肌身離さず持っていて」
お雪は着物の袂からお札の束のようなものを取り出してセイコに手渡した。
「これって……」
「妖怪を呼び出すにはそのお札の中から役立ちそうなのを選んで呪を唱えてね、みんなすぐに飛んで来るから」
「ありがとう、お雪さん」
「いいのよ、でも、早速だけど巳之吉に会わせてくれない?……」
「もちろんよ」
セイコとお雪は顔を見合わせて微笑み合った。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「結局、私は宿題を提出できないまま終わったな」
アジトに戻りくつろいでいた時、丈二が苦笑交じりに言う。
「君の科学力にはいつも助けられているんだ、気にするな」
隼人がぽんと背中を叩くと晴子も追い討ちをかける。
「宿題は自分でやらないと意味がないんじゃありません?」
「それもそうだな」
丈二が頭を掻くと、リビングは暖かい笑い声に充たされた。
晴子も心から笑うことができる、守ってもらうのには変わりはないが、もうライダーチームの面々には迷惑をかけずに済む、それが何よりうれしかったのだ。
何はともあれ、ライダーチームにはまたも援軍が加わった。
しかし、ショッカーが指を咥えている筈もない。
激しい戦いの日々はこれからも続くに違いない……世界に平和が戻るその日まで。
(終わり)
作品名:宿題だよ! ライダー! 作家名:ST