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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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ブドウのような味の恋

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裕子は私の体に浸透してきていた。
その事は裕子からメールが来るたびに喜びを感じ、妻への背徳を感じるようになっていた。
私は平常心を装いながら妻と向き合いながらも、もしもと裕子とのこれから先を考えると、いまテレビで写されている、ボクシングのようにどちらかに勝ち負けを判定するのかと頭に浮かんだ。ドローになって両者の手を挙げたい。
それは私の身勝手である事は知っている。
裕子はまれに電話もしてくれた。気を使ってくれているのだろう、「お変わりないですか」
「こちらは雨です」そんな短い言葉であった。
そちらからお電話いただけると嬉しいです。メールでこう書いてもよこした。
私は裕子を知ることで、別の世界を知る事も出来たように感じていた。
弱者への配慮である。ボランテァなど考えた事もなかったのに、そんなことはできないものかと考えていた。
老人ホームへ車椅子を2台送ることにした。
自分の家族、自分の会社そのことだけを考えていたことから少し先に進んだ満足感を感じた。
しかし、家族を守ってきたこれまでの私は、特に妻には自分自身で逃げようとしていたのかもしれない。