大変じゃのぅ。。。
「これはこれは…ご苦労様です」
七五三の担当神である漆伍参は、上宮入って来た仏教の護法神に声を掛けました。
「今年も、毘沙門天様が参られたのですね」
「そうじゃ」
「ご足労頂き、恐縮です」
「大事ない。」
接待の間に案内された毘沙門天は、胡座をかいて床に座ります。
「あれは、準備してくれておるのか?」
「お神酒で御座いますね」
「…般若湯じゃ」
「これは失礼仕りました」
「で、あるのか?」
「御座います」
「おお!」
破顔一笑する毘沙門天に、漆伍参は、申し訳なさそうに切り出しました。
「その前に…」
「おお、そうじゃったな!」
「無粋な事で、申し訳御座いません」
毘沙門天が口の中で何かを呟くと、大量の巻物が出現します。
「これが今年、全国の寺へ七五三で詣ったもの達の、成長の感謝や加護の祈りじゃ」
「謹んで、お引き受け致します」
「神道側も、大変じゃのぅ」
「毎年の霜月の晦日、わざわざ引き継ぎにお出で下さる仏教の方には、大変感謝しております」
「七五三は、神事由来の行事じゃからのう。神道の方に預けるのが筋と言う物じゃて」
「忝ない事で」
「まあ、お互い様という事じゃ」
「…日本では、神社も寺も似た様なものだと思われております故」
話が終わったのを見計らったかの様に、運ばれてきた酒。
そわそわしだした毘沙門天に漆伍参が促します。
「どうぞ、お召し上がり下さい」
「では、遠慮なく頂こう。」