期待してるから♡
「お待たせー」
誕生日デートの当日。
玄関の扉を開けた有希子さんは、迎えに来た浩紀君に駆け寄りました。
「どう? 今日のコーデ」
「…良いと思う」
「ほ・め・て。」
「物凄く可愛い!」
「宜しい」
浩紀君は、満面の笑み浮かべた有希子さんに、ラッピングされた大きな包みを差し出しました。
「誕生日おめでと」
「ありがとー」
受け取ろうと、腕を伸ばした動作が、途中で止まります。
「え!? <水の中の月>のラッピング?」
有希子さんは興奮して、包装紙を解き始めました。
「な、何でこの子が ここに?!」
出て来たのは、希穗さんに譲った<ムラサキうさぎ>のぬいぐるみ。
様子を見ていた浩紀君の口が、満足げに緩みます。
「ユッコさんが それを譲った相手って…僕の妹だったんだよね」
「コーキが、希穂ちゃんのお兄さん…」
「そう」
「希穂ちゃんは…コーキの依頼で、私からこの子を、譲り受けたって事?」
「正解」
「で、それを今、私はプレゼントされた訳!?」
「どう? このサプライズ」
「─ 凄い。」
「でしょ?」
「この子と私の絆!」
「は?!」
「あなたは…私の所に来る運命だったんだね♡」
嬉しそうに、ぬいぐるみに頬ずりをする有希子さん。
サプライズが、自分が意図したものと違ってしまった浩紀君は、内心で呟きます。
「この敗北感は、何だろう。。。」