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こっちのもの

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「さっき…事件を期待しているって、言いましたよね?」

 疑問を解決すべく、私は気を取り直す。

「はい」

「…どうしてですか?」

「その方が、当ホテルには、好ましいからですわ」

 フロントの女は当然の様に言った。

「最近は、敢えて宿泊される物好きなお客様が…結構いらっしゃいまして」

「─ 事件が起こったホテルにですか?」

「はい。」

 女が声を潜める。

「今は<何かが出るらしい>と言う噂しかないので、それなりの数しかお泊り頂けないのですが…」

「…」

「名探偵、島様が手掛けた殺人事件の舞台ともなれば…かなりの数のお客様に、おいで頂けますわ♡」

 私は呆気に取られて、何も言えなかった…

作品名:こっちのもの 作家名:紀之介