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こっちのもの

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「もしや、お客様…」

 フロントの女の目は、宿泊者カードの私の名前の欄で止まった様だ。

「─ あの島様ですか?」

 あと少しの所で、気付かれてしまった。

 鍵さえ受け取って仕舞えば、こっちのものなのに。

 そこまで行けば、流石にホテル側も 宿泊を断れないのだから。

 心の中で舌打ち。

 やっと見つけたホテルだが、宿泊を諦めるしかないのか。

 半ば諦めた私に、すっと差し出される部屋の鍵。

「どうぞ、ごゆっくり お過ごしください」

「え?」

「期待してますよ♡」

 私の目が、鍵から女の顔に移動する。

「…な、何をですか?」

作品名:こっちのもの 作家名:紀之介