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月とコンビニ
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オクターブ!‐知らない君に恋をした‐

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奏手「…」
 涙を堪える二人。意地でも零してやらないとでもいうように。
白凪「だけど、…黒瀬くんが本気で私のことが好きだってのは伝わった。そんな告白だった。だから言ったんだ。正直に。全部。ありのまま。それが筋だと思った」
奏手「…」
白凪「…」
奏手「…」
白凪「帰るわ」
奏手「…」

 白凪、靴を履き直し、乱れた髪をそのままに外へと出て行く。奏手はそこを動かない。
出て行くものも、残るものも、似た者同士だと、本人たちだけが気が付いた。



 音楽室。「猫踏んじゃった」は聞こえない。蝉の声と遠く部活動の喧騒、夏風が心地よい。
開けられた窓から白凪がグラウンドを見つめている。絆創膏とガーゼだらけの顔。
その手に辞書を持っている。

白凪「彼方って、彼の方と書くんだって…。どちらにしても、私からは遠く離れた場所のことだ。それでも、それを見つめて生きろということなんだろうか。不器用なのかな。何も考えていないのかな。ううん、信じてみよう。彼がくれたお題なのだから。ひとまわり違う彼。私の彼方。オクターブ。彼方を見つめて」



おわり