蜜月(ライダー!シリーズ・番外編)
「ぎゃっ!」
「これでトドメだ! マッスル・パンチ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ああああっ! シーサー男がっ! くそっ、マッスル! レディ9! 覚えていろ! この借りは必ず返すぞ!」
「ははは、地獄大使、二箇所同時襲撃とは考えたな、だがそっちも戦力半減だったようだな」
「くそぅ……今に見ていろ! こうなったら大々的に求人広告を出して戦力増強だ、その時になって吠え面かくなよ! ひとまず退却だ! 退け、退け!」
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「ふぅ……さすがに二人だと危なかったわね」
「いや、俺たち二人の絆があれば怖いものなしさ」
「ふふ……それもそうね」
「とりあえずおやっさんに報告しないとな」
「そうね、それはあたしが……あ、志のぶです、シーサー男は撃退しました、そちらはどうですか?……あ、はい、それは良かったです……え?……でも……そうですか? お言葉に甘えても?……はい……はい……ありがとうございます、ではそうさせていただきます、感謝します」
「どうした? おやっさん、何か言ってたのか?」
「うん、大阪に現れたグリコ男は撃退したって、でね、しばらくはショッカーも現れないだろうから、ニ~三日こっちでゆっくりして来てはどうか、ですって……」
「……いいな……考えてみればお前と旅行なんてしたことがなかったな」
「ええ……新婚旅行も……」
「すまなかったな」
「いいのよ、刑務所から出て来たあなたを待ち構えて押しかけ女房になったのはあたしの方だもの」
「それはそうかもしれないが、こんな俺にここまで良く付いて来てくれた……今だって戦いの日々だし……」
「ううん、正義の為に立派に戦うあなたを支えられるんですもの、こんなに充実した日々はないわ、あたしの方から感謝したい位」
「ありがとう……それにしても、おやっさん、粋な計らいをしてくれるな」
「ふふふ……そうね……あなた、せっかくだから新婚旅行のつもりで……」
「ははは、八年遅れの新婚旅行か、随分待たせたな」
「その分、たっぷりと幸せな気持を味あわせてね」
「ああ……その、なんだ……愛してるよ、志のぶ、初めて会った日からこの気持ちは変わらない」
「あたしもよ、あなた……」
と言うわけで、剛と志のぶはつかの間の蜜月旅行を楽しむことになった。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
まぶしく輝く太陽、エメラルドグリーンに輝く海、海中を彩る珊瑚と色鮮やかな熱帯魚たち、吹き渡る風に乗って漂う三線の調べ、ゆったりと流れる時間、そして、どこかのんびりした感じの陽気な人々……。
二人は沖縄の休日を心ゆくまで楽しんだ。
そして、今日は東京に戻るという日の朝。
ベッドで目を覚ました志のぶは、傍らで寝息を立てている剛を見やった。
剛と出会ってからの波乱万丈の日々が蘇る。
地元有力者のドラ息子から守ってくれた時の雄姿……拘置所に面会に行った時のそっけなくも誠実な態度……刑務所の門で待っていた志のぶを見つけた時のびっくりした顔……意を決してプロポーズしてくれた時のぎこちないダンス……自分を養うためにショッカーに在籍していた頃のどこか無理しているような様子……ライダーのおかげでショッカーを抜けることができて覆面プロレスラーとなった頃の吹っ切れた様子……そしてライダーチームに迎えられてからの生き生きとした毎日……。
(この人に出会えて、この人を信じて付いて来て良かった……この人とは赤い糸で結ばれていたんだわ、ううん……この人との絆は糸なんてもんじゃないわ、赤い紐で結ばれていたのよ……)
志のぶはしみじみとそう思った。
そして、まだ眠っている剛の唇にそっとキスをした。
「うん? 志のぶ……起きてたのか」
「ごめんなさい、起こしちゃった?」
「いいんだ……こんな起こされ方なら毎日でも歓迎さ」
そう言って剛は志のぶを抱き寄せた。
「志のぶ……」
「あなた……」
ベッドの上で重なり合う二人……。
「あ……良い子はこの先を見ちゃダメよ」
志のぶはベッドサイドのカーテンを引いた。
(おしまい……この先はご想像にお任せします(^^))
作品名:蜜月(ライダー!シリーズ・番外編) 作家名:ST