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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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旧説帝都エデン

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 司法は壁に囲まれ、窓はない。あるのは開かずの扉のみ。
「じゃあ、どうやって出ればいいんだよ」
 ――椅子に座ってだいぶ時間が経っただろうか、壁に取り付けてある鳩時計が7回鳴った。時刻は夜の7時。おそらくタイムリミットまで半日を切った。
 焦りを覚えてきた時雨は、もう一度部屋中を隈なく探したが、鍵は見つからなかった。
 時間だけが過ぎていく。
 時雨はあきらめた。自分の力ではここを出ることはできない。椅子に座って何かが起こるのを待つことにした。
 待った。だいぶ待った。嫌になるほど待った。――何も起きない。
 時雨がテーブルに突っ伏していると、ドアをノックする音が聞こえた。すぐさま時雨がドアの方を振り向くと、開かずの扉が開こうとしているではないか!?
 ドアは引くでも押すでもなく、横に開けるでもなく、下から上にシャッターのように開いた。
「うっそ〜!」
 口を空けっぱなしになって、時雨の魂は飛んだ。
 ドアを開けて入って来たのジャケットを着た、人間ほどの大きさのウサギだった。ウサギはトレイに飲み物を乗せてやって来た。
 時雨の前に置かれる飲み物。時雨はその中身を覗き込んだ。
 湯気が立つ、透き通った緑色の液体。お茶の芳しい香が時雨の鼻を衝く。
「飲んでいいの?」
 そう時雨が尋ねると、ウサギは大きく頷いてみせた。
「じゃあ、いただきま〜す」
 お茶好きの時雨は何度も入念に息で冷ましてから一気に飲み干した。
「このお茶美味しい。でも、少し……なんだか……ううっ」
 時雨は瞼が重くなるのを感じ、次の瞬間には辺りが真っ暗になり椅子から転げ落ちた――。

 時雨が気がついたのはベッドの上だった。
「お気づきですか? 何か飲み物でもお持ちしましょうか?」
 時雨に声をかけて来たのは梟であるセバスチャンだった。
 ふらふらする頭を抱えながら時雨は首を横に振った。
 時雨は置時計に表示されている時刻を見て、再びベッドの上に倒れ込んだ。朝の10時前――だいぶ長い時間気を失っていたらしい。見事にやられた。
 勝負は時雨の負けだった。
 よろよろと立ち上がった時雨はセバスチャンに頭を下げた。
「帰ります。セーフィエルさんにはよろしく言っておいてください」
「正門までお送りいたします」
「いいです別に。じゃあ」
 軽く手を上げた時雨は部屋を後にした。
 時雨の立ち去った部屋の中からは女性の笑い声が聴こえて来た。
「また、遊びましょうね」

 魔女の屋敷 完