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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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旧説帝都エデン

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 命は右手の中指と人差し指で空[クウ]を突き刺した。すると、空間が裂け、中から式神があらわれた。
 式神は命に抱えられると、そのスイッチを入れられた?
 その光景を見ていた時雨は疑問にかられ、どうしても命に質問をしてみたくなった。
「あのぉ、一つ聞いてもいいかなぁ」
「なんじゃ、ゆうてみい」
「それって……」
「それって?」
「掃除機だよねぇ?」
 そう、たしかに命の腕に抱き抱えられていたのは紛れも無い掃除機だった。
「そうじゃがそれがどうかしたか?」
「いや、なんで掃除機なの?」
「こやつは元々九十九神じゃったのだが、まぁ色々あってのぉ、わらわの式神にしてやったのじゃ」
「そうなの……でも、これ役に立つの?」
 掃除機が時雨の言葉に反発するように暴れた。
「なんだ、この人間俺様に対して失礼だぞ」
「まぉまぁ、そうゆうでない」
「なんだこれ、喋ったよ」
 そう、時雨の言うとおり掃除機は人間の言葉をしゃべっていた。
「当たり前だろ、俺様は式神なんだから喋れるに決まってんだろ、こいつバカか」
「よく見ると、目とか口とか付いてるねぇ」
 そう言いながら時雨は式神の目を突付こうとした。
「何すんだバカやろう、目なんか突付かれたら痛いだろ」
 ガブッ!! 式神はいきなり掃除機の吸い込み口で時雨に噛み付いき、しかも離そうとしない。
 ぶんぶんと手を振るが式神は一向に時雨の手を離そうとしなかった。
「こら、止めんかバサラ!」
 命が式神を怒鳴りつけるとすんなりと手を離した。
「こんぐらいで許してやるか」
「バサラよ一仕事じゃ、あ奴を吸い込め」
「おうよ、なかなかの大物みたいだが俺様にかかればどうってこったない」
「時雨、わらわの後ろにマナを運んでやれ」
「あぁ」
 時雨は命に命じられマナを命の後ろに運こぼうとマナを抱きかかえた。
「時雨ちゃ〜ん、レディはやさいく扱いなさい」
「はいはい、言われなくても分かってるよ」
 時雨はマナを丁重に命の後ろに運び、ゆっくり地面に下ろした。
「時雨、おぬしもわらわの後ろに居れ」
 バサラは大口を開け大きく息を吸い込んだ。すると店内に散らばる物が見る見るうちに吸い込まれていった。その力は強大でついには悪魔までも吸い込もうとした。
 悪魔は必死に抵抗する。しかし、悪魔の乗っていた狼があえ無く掃除機の中へ吸い込まれていった。
「反則技だよ……」
 時雨が小さく呟いた。
 掃除機は全てを吸い込んでしまいそうな勢いでどんどんいろんな物を吸い込んでいく。
 悪魔は大剣を地面に刺し込み必死に抵抗しているが、身体が宙に浮き、悪魔は吸い込まれないように剣を強く握りしめる。
 そして、そのまま3分の時間が過ぎた。
「粘るねぇ、あの悪魔」
「仕方ないのぉ、バサラよ出力を上げよ」
 吸い込む力が急に強くなった。
 そして悪魔はついに剣ごと掃除機に吸い込まれてしまった。――呆気無い幕切れだった。
「あぁん、アンドラスちゃんがやられるなんて信じられないわぁん」
「観念せい、マナよ」
「観念? あたしはまだ負けてないわよぉん」
 マナは自らの足で?立ち上がった?。
「あっ……」
 時雨の表情が凍りついく。マナのおでこに張られていたハズの札が無いのだ。
「二度目は少しは早く解けたわぁん」
 マナの手にはすでに大鎌が握られ戦闘体制を取っていた。
「本番はこれからよぉん」
 凍り付いていたハズの時雨の口元が少し緩んだ。そして、命も冷たい微笑を浮かべた。
「あらん、お二人とも笑ったりしてどうしたのぉん?」
「気づかんのか?」
「ほら、自分のおしりのあたりを見てごらんよ」
「えっ、何? ……!? ……いや〜ん」
 マナのスカートの裾から、くにゅくにゅと動く何か黒く長いモノが出ていた。
 マナはそれに驚き後ろを振り返ると、そこには光か輝く満月が地面を照らすために顔を出していた。
「今夜は満月の晩だったの!?」
「君の負けだよマナ」
 マナの身体には次々と異変が起きていく。
 頭にはいつの間にか黒い猫のような耳が飛び出ていて、身体は徐々に黒い毛に包まれていく。
「にゃ〜ん」
 ついにはマナの身体は縮んでいき、そのまま黒猫の姿になってしまった。
「マナって、満月の光を浴びると、黒猫になっちゃうんだよね」
「にゃ〜ん」
「はぁ、これで安心して家に帰れる」
「そうじゃな、帰路に着くとするか」
 時雨はマナを抱きかかえ家に帰るために足を動かした。命もそれに続いた……のだが、二人の足が不意に止まった。そして、二人同時に同じ言葉を呟いた。
「「あっ……」」
 二人の目線の先には元エレベーターがあった。その元エレベーターは扉を開けたり閉めたりを繰り返している。
 時雨はロボットダンスのような動きで命の方を振り向いた。
「ねぇ、ここってさぁ、タワー登るとき途中までは階段でも来れるけど最上階のここってエレベーターでしか来れないよね?」
 最後の『よね?』には必要以上に力がこもっている。
「さようじゃ」
「非常階段とかはあるよね?」
「マナと殺りあった時、壊してしもうた」
「さっきの”神隠し”は使えないの?」
「力はもう使い果たしてしもうた」
「あははははは……はぁ」
 時雨は無表情のまま心の無い笑いをして、ため息をついた。
 1月中旬の帝都の夜はまだまだ冬の寒さが厳しかった……。
 
 事件を聞きつけ駆けつけた帝都警察は、エレベーターが壊れている上に命が外に被害が及ばないようにいつの間にか張っておいた結界のせいでヘリコプターでも入れず、結局三人が地に足を付くことができたには次の日の朝方のことだった。
 マナが人間の姿に戻るのを待ち、魔法で建物、その他諸々を元通りに復元をして下に降りることができたのだった。
 なお、マナと命の力により関係者の記憶は改ざんされ、この事件は見事にもみ消され闇の中へ葬り去られたのだった。
 しかし、時雨とマナの追いかけっこだけはTVで中継されたために消せない事実として残ってしまったらしい――。

 魔女っ娘マナ 完