小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

④全能神ゼウスの神

INDEX|9ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 

リカ様は、ジッと私を見つめる。

「…めいは、すごいな。」

長めの前髪からのぞく黒い瞳が、眩いものを見るかのように細められた。

「今まで、王子の時もゼウスの時も、国や民、宇宙…全て私がひとりで守るもんだと思っていた。確かに兵士や天使や悪魔達と一緒に闘ってきたけど、ひとりで采配し、最後は私が全て責任を負ってきた。…だから、支え合うなんて、知らなかった。」

私は、大気に瞬く星のように揺らぐ黒瞳を、真っ直ぐに見つめ返した。

「知って、良かったですか?」

「ん。」

私が訊ねると、リカ様は頷きながらふわりと笑った。

やわらかに細められた瞳は本当に美しく、私の心すべてを一瞬で奪ってしまう。

そうして二人でしばらく見つめ合い、微笑みを交わした。

「なぁ。」

不意に、低い声色でリカ様が口を開く。

「めいは、私のどこが好き?」

直球で訊かれ、私の心臓が爆発しそうになった。

「え…!?いや、あの…ええ!?」

想いを伝える予定でなかった私は心の準備ができておらず、激しく動揺する。

そんな私を見て、リカ様が吹き出した。

「めい…動揺しすぎ!」

肩を揺らして笑うリカ様を至近距離で見て、羞恥も伴って更に身体から火が出そうに熱くなる。

私は必死に気持ちを落ち着けようと、深呼吸を繰り返した。

「こら。そんなにしたら、過呼吸になるぞ。」

リカ様が、私の背を優しく撫でてくれる。

その瞬間、また金色の光に包まれた。

「…。」

慌てて体を離そうとすると、リカ様は私の肩を掴む。

そうこうしているうちに、光は再び虹色になっていった。

「リ…カ様っ!」

身動ぐ私を、リカ様がまた力強く抱きしめる。

「…なぁ。」

耳元に吐息がかかり、低い声が直接鼓膜に届く。

「さっき何ともならなかったから、このまましばらくいてみようか?」

喋る唇が首筋を撫で、体の芯が熱く甘く痺れた。

「そうだ。賭けてみる?」

(賭ける?)

「そ。長くこの光を浴びてもしゼウスになったら、神界に一緒に帰ろう。で、魔導師のままだったら、ここで一緒に暮らそう。」

リカ様の言葉に、胸が熱くなる。

「ま…魔導師長とゼウス…どちらが力は強いんですか?」

甘い悦びでだんだん腰に力が入らなくなってきた私は、リカ様にしがみつくように胸元をぎゅっと握りしめた。

「さー…異空間だし、力の種類も違うから比較しようがねーもんなぁ。ただ」

そこで言葉を切って、黙りこむリカ様を私は見上げる。

すると一瞬視線を交わした後、すぐにきつく抱きしめられた。

「…ただ?」

私は訊ねながら、リカ様の胸に頬を押し当てた。

(リカ様の鼓動…少し早い?)

ゼウスの時も、何度もこうやって抱きしめられてきた。

けれど、その時よりも鼓動が早い気がするのは気のせいだろうか。

「…ただ、ゼウスと違って魔導師長は挿れてもスティグマは現れない。」

(!!)

私は思わず、リカ様を張り倒した。

「もー!!セクハラ!!!」

身体中から汗が吹き出て真っ赤になって怒る私に、リカ様が笑いながら腕を伸ばす。

「あっはっは!冗談だって。」

そして逞しい腕で、再び優しく抱きしめ直した。

「ただ、こうやってても、ゼウスの時みたいに力がみなぎる、って感じじゃねぇな。なんか…力っていうより、心が満たされる…て感じ?」

(…。)

言いながら、私の首筋に再びリカ様は顔を埋める。

「すっげー…ホッとする…。ずっと、こうしてたい。」

甘えるリカ様の大きな背に腕を回し、私は包み込むように抱きしめた。

「リカ様…。」

虹色の光が、広い室内に充ちていく。

「『様』いらねー。」

リカ様は、ゆっくりと私から体を離した。

夜空のようにどこまでも深く穏やかな黒い瞳が、真っ直ぐに私を見つめる。

「支え合う、って、対等ってことだろ?」

「…はい。」

私が頷くと、リカ様がふわっと笑った。

「じゃ、敬語も様もいらねーじゃん。」

「…。」

(…それは…。)

いきなりのプレッシャーに、思わず目を逸らすと、すかさず顎をとらえられる。

「タメ口で呼び捨てにしないと、ちゅーするぞ。」

(ちゅー!?)

艶やかな笑顔と裏腹の可愛い言葉に、胸がきゅっとしめつけられ、理性はブラックホールへ一気に吸い込まれた。

「…じゃ、言わない…。」

「は?」

思わず漏れ出た本音に、私もリカ様も驚く。

「あっ!つい本音が!」

言いながら、それも隠すべき本音だったと気付き、口元を慌てて隠したけれど、時すでに遅し。

「あっはっは!!」

リカ様がお腹を抱えて笑い始めた。

「ごめんごめん、逆だな!」

笑い涙を拭いながら、再びリカ様は私の顎をとらえる。

「タメ口、呼び捨てができたら…ご褒美にちゅー。」

「!!」

言いながら顔を傾けるリカ様の色香に堪えきれず、私の意識も遂にブラックホールへ吸い込まれてしまった。
作品名:④全能神ゼウスの神 作家名:しずか