④全能神ゼウスの神
(さすが、甘党!)
「じゃ、どっちも作ろうか。」
そう答えた瞬間、リカの顔がパッと輝く。
(か…可愛い!)
その表情があまりにも嬉しそうで、私の胸が甘くしめつけられた。
「パンが甘いので、飲み物はコーヒーね。」
「カフェラテ。ミルク多目で。」
(…。)
(なんで、こんなに可愛いの?)
あまりの可愛いさに顔が熱くなると、リカの頬と耳も真っ赤に染まる。
「可愛い言うな。」
怒ったように口をへの字に歪めぷいっと顔を逸らすけれど、それすら可愛くて私の頬はほころぶばかりだった。
その後、台所でリカの瞳が輝く中、お望みの朝食を作って部屋へ戻る。
二人で食卓を囲み、遅い朝食を摂ると、リカがとろけるような甘い笑顔で私を見た。
「うま♡」
「良かった!」
私が笑顔を返すと、カフェラテを一気に飲み干したリカが私の後頭部を引き寄せる。
「食後のデザートも。」
「あ!…じゃあバナナを…んっ。」
言いかけた時、唇が重なった。
リカは私の唇をペロッと舐めると、唇を少し浮かせて至近距離で見つめてくる。
「ん。うま。…もっと…。」
カフェラテの甘く香ばしい香りが交わり、リカの色香に頭の芯が甘く痺れた。
私がとろんと目を伏せると、すぐに深くリカの唇が重なる。
そして、バターと砂糖の味がする湿った熱がするりと入ってきて、私を甘く絡め取った。
そのまま、お互いの存在を確かめるように絡まり合う。
優しくゆっくりと愛撫し合うように深まる口づけに、互いに夢中になったその時。
パンッ!
ガラスが弾ける音がした。
そして頬にピリッとした刺激が走る。
「っつ!」
私が呻くと同時に、リカが素早く後ろをふり返った。
「!!」
ガタンッと杖が音を立てて倒れ、珠は既に割れている。
そして、その隣には…ヘラ様が立っていた。
「ヘラ…!」
リカが呼ぶと、ヘラ様は妖艶に微笑む。
けれど、なんだか様子が変だ。
リカも何か感じ取ったのか、私を背に庇いながらヘラ様をジッと見つめる。
何も言わず、背筋がふるえるほど冷ややかな碧眼で、ヘラ様もこちらを見つめた。
(つづく)