小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

「熟女アンドロイドの恋」 第六話

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
エイブラハムは梓に一人で外出しないように忠告した。
事故被害者集会での内藤の呼びかけがすでに洩れている可能性があったからだ。
この日から裁判当日まで引きこもりの生活が余儀なくされた。
子供のころまったく外に出なくなっていた時期が長かったので、さして気にならない梓ではあったが、内藤のことが心配に感じられた。

そしてその危惧は現実のものになった。
消防車のサイレンが鳴り響く方向に内藤の研究所があった。
真っ赤な火の手が上がっている。恐らく放火だろう。幸い内藤は留守にしていたので、
被害は建物だけに終わった。

取り調べで裁判があることを恨みに思っている誰かの仕業だと話したが、警察には多分通じることではなかったであろう。
組織的に今度の裁判を妨害する動きが徐々に感じられていたからだ。

やがてエイブラハムが深刻な表情で内藤と梓の前に居た。

「本国へ帰ることになった。国王からの命令なので断れない。日本政府の依頼で動かされたのだろう。大きな力を裏に感じるよ。内藤さん、あなたも気をつけた方が良い。もちろん梓さんも」

エイブラハムでさえ動かしてしまうほどの力があるとしたらそれは誰なのか、総理大臣しか思いつかない。
政府与党に何らかの危機感があったのだろう。
裁判を阻止したい日本国は大きな嘘を隠すために動き出していた。

「エイブラハムさま、本国に帰国されるとなると、ここはどうなるのですか?」

「そのことが一番気がかりなんだよ。SPが居なくなって、ただの住居になったら、何が起こっても災難だったで済まされる。身を隠す場所を見つけないといけないだろうね」

「一つ考えがあります。魔王で働いていた時のお客様でアメリカ大使館に出入りされていた方がおられるんです。ご無理をお願いして、貿易交渉をするとかの口実でアメリカへ招へいされるという措置をお願いすれば、本国も経済的な理由を優先するでしょうから帰国ではなく渡米という判断に変わるかも知れません」

「そんな頼みごとが出来るのですか、梓さん」

「連絡を取ってみます。明日にでも東京へ同行して戴けませんか」

困った時の神頼みとは日本人の習慣だ。
本当に困った時のために人脈を作るということを政財界人はやっている。
魔王こそは裏社会の重鎮たちが集まっていたから、こういう時には頼りになる客がたくさんいたのだ。

翌日の夜、魔王には梓が連絡をした男性がエイブラハムと向かい合って座っていた。