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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「熟女アンドロイドの恋」 第四話

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内藤は毎年8月のこの日にこのままではいけないとの思いを強くするが、決定打が無かった。梓を探し当てて決定打を得た今、今年は自分が新しく物証と証人を出して裁判に挑む決意をしていた。
エイブラハムも資金面で支えてくれている。梓が納得してくれたらすぐに手続きに取り掛かりたいと願っていた。

内藤が被害者の会へ梓を引き連れて現れたのはGW前の日曜日だった。
見慣れている顔に笑顔で挨拶をされると、少し緊張した面持ちで梓を横に立たせて話し始めた。

「皆さん、今年もこの時が来ました。やっと新しく物証を見つけて、そして証人も探し当てました。ご存じの通り私はあの記事を書いた内藤記者の息子で内藤肇です。そして、ここに居る梓、いや枇々木潤子さんを新しく証人として要請し、裁判を開始させる決意でおります」

会場内には100名ほどの遺族が居たが、大きなため息が漏れた。
代表者の一人が質問する。

「内藤さん、枇々木さんってどういう証人なんだ?」

「あの事故で助かった一人なんだよ。報道はされなかったけど」

ええ~という声が場内に響き渡った。

「失礼だけど、年齢からして事故の時は小さかったんじゃないのかね?記憶しているとは思えないのだが、内藤さんその辺はどうなんだ?」

「代表、確かに彼女は鮮明に記憶している訳ではありません。しかし、彼女の存在そのものが大きな物証じゃないでしょうか?この時まで誰も知らないことなんですよ。それに、搭乗者名簿を見れば枇々木潤子さんが乗っていたことは判るはずです。生存者がまだいた、これだけで十分な再審が可能だと思います」

内藤が話したことはその通りだと居合わせたみんなは感じていた。
裁判で明らかになれば、生存者は4名ではなく5名となる。
なぜ間違った報告をしたのか追及を受けるだろう。そしてその先に自衛隊と在日米軍との演習での不注意が指摘され、自営隊にもメスが入る。
それは国家を揺るがすような大きな事態になるかも知れないと内藤は思っていた。

ざわつきが収まらない会場内で一人の青年が挙手した。
彼はある危惧を話した。

「枇々木さんが本当に生き残りなら、これは大変な発表になります。事前に漏れないという保証が無いので、彼女の身の安全が懸念されます」

内藤はこの発言によくぞ言ってくれたと感謝した。