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てっしゅう
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「熟女アンドロイドの恋」 第四話

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エイブラハムの出身国は2020年まで石油産出国として世界を牛耳っていたイスラム王国だったが、隣国の領土問題が紛争化し、こともあろうか核兵器を使用する事態を引き起こし大きな犠牲と放射能汚染を引き起こし、大量に避難民が押し寄せて国家が二分した。

それはイスラム教徒とユダヤ教徒がお互いに理解をすることなく揉め事をこの事態になっても続けていたことから、国王の命令で境界線を引き民族を分断した。
当然のことながら元々がイスラム国家だったため、ユダヤ地域からの難民は虐げられていた。

エイブラハムはアラブ系民族でありながらユダヤ教徒だったので、激しい非難を背に受けて政府内で活動していた。
脱石油というスローガンを掲げて何度も何度も国王と会談し、ユダヤ難民を引き受けるという約束で広大な国家の南の果て、紅海に面した荒れ地を割譲してもらい、自らが先導して最先端科学を国家の柱として外貨を得る新しい国づくりを始めた。

こうなった事には伏線があった。
それは石油にだけ頼る経済政策に陰りが見えていたからだ。
世界的に脱石油エネルギーの開発が進み、先進国ではここ十年もすれば半数の乗用車が電気モーターだけで走行するような見通しになっている。
発電も水力や風力、太陽光パネル、地熱、海流などの多角的利用で減少した全エネルギーをカバーできる見通しもついている。

メタンハイドレードの本格的採掘と利用にもめどが立って、ますます石油は世界から必要とされなくなってきていることが、イスラムだユダヤだなどと争っている場合じゃないという事態に来ているということだろう。
エイブラハムは国王から裏金で支援を受け、開発した先進科学技術の提供を見返りとして献上する約束を交わしていた。

内藤が研究している遺伝子技術は革命的なものだ。
最終的に実現すれば映画の世界で描かれてきたアンドロイドが誕生する。
国際遺伝子学会では人体への臨床試験は報告と国家管理とすることが義務付けられていた。違反すると制裁があるので秘密裡に進めている国はなかった。
唯一日本に無認可の研究機関があることは絶対にバレてはいけないことなのだ。

梓が大阪に来て一年ほどが経過していた。
内藤は遺伝子工学の研究の傍ら別の何かにも没頭していた。梓との出会いからそれは始まっていた。

85年に起きた飛行機墜落事故の風化を恐れる被害者家族が毎年集まって政府に再度調査をするように提訴していた。
裁判所は解決済みとの判断で訴えを却下している。
新しい物証が出ない限り審議が開始される気配も感じられない。
政府と飛行機会社との間で密約でもあるのかとツイッター上で激しく抗議されている。