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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 71話~最終話

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 「ほら、ごらん。心配しすぎだ、清子は。
 この子はもともと丈夫な子だ。こんな風邪くらいじゃ死なないさ。
 熱があるくせに清子のぺちゃパイより、あたしのDカップの方がいいなんて
 贅沢を言うくらいだ。
 風邪くらいじゃ死なないさ。こんな、どスケベ過ぎる子猫は」

 大きなお世話だとたまが、目を見開く。
熱のせいで、気を失っていただけだ。
よっこらしょと立ちあがるたまを、清子が両手でささえる。
充分に力を入れ踏ん張ったつもりだが、足元が小刻みに震えている。

 「無理しなくていいよ、たま。熱があるんだ、おまえは」

 清子がふわりと、胸へ抱きあげる。
乾いたタオルで、たまの顔を拭きはじめる。
鼻汁がきれいにぬぐわれたとき、たまの嗅覚がよみがえって来た。

 湿った重い空気。その中に、かすかにただようヒメサユリの匂い。
抱かれた清子の胸から懐かしい匂いがする。恭子から濡れた髪の匂いが
漂ってくる。
遠くから、ほんのわずかだが、カツオ節の匂いが流れてきた。

 『あれ・・・おいらの大好物の、カツオ節の匂いがするぞ!』

 たまの耳が、ピクッと反応する。
嗅覚だけではない。猫はするどい聴覚ももっている。
犬が嗅覚の動物と呼ばれるのに対し、猫は聴覚の動物と呼ばれるほど
発達した聴覚を持っている。
暗い林や森の中で、獲物を待ち伏せすることで生き延びてきただからだ。