gift of us
「うん、わかる。俺もまだ、正直よくわかんないしーーまあこれからだよ。ちょっとずつ実感していこう」
「……あ、そうだ。写真もらったの」
と言って、彼女がカバンから領収書などとともに出してきたのは、超音波検査の写真だった。黒地の背景に扇形に広がった白いものが写り、その中心からやや右にそれたあたりに、小さな黒い、丸いものがある。
「これ? ……小っさいな」
「ん、まだ7ミリか、それくらいだって。予定日は確定じゃないけど、来年の1月なか、ばぐらーー」
一緒に写真を見ていた彼女の声が急に揺れて、途切れた。はっとして隣の彼女を見ると、唇が震えている。目にいっぱいにたまった涙が、見る間にあふれて流れ落ちる。
写真から手を離し、彼女は両手で口を覆った。その震える肩を引き寄せて、抱きしめる。
「友美」
「…………よかった。できない体じゃなくて、よかったーー」
後は言葉にならないかのように、再び口を覆って泣き続ける。その様子に、彼女がこれまでどれほど悩んで、辛い思いを抱えてきたのか、あらためて知らされる。
「ん、よかった。よかったな、ほんとに」
だから自分も、同じように言葉を繰り返す。右手で抱き寄せた彼女の頭を撫でながら。
ひとしきり泣いて、少し落ち着いた様子の彼女が「いつ、知らせようかな」と言った。
「心音の確認できてからでいいんじゃないか。それとも、念のため安定期に入るまで待つ?」
「んーーでも、あと何ヶ月も黙ってる自信ないし、水くさいって言われちゃいそう。心音確認できてからにするよ」
「わかった。それまでは秘密な」
うん、とうなずいた彼女は、ここ数ヶ月の中では初めてじゃないかと思える、心からの笑顔になっていた。まだ涙の跡は残っていたけれど、自分が大好きな、とても可愛くきれいな表情だった。
- 終 -
作品名:gift of us 作家名:まつやちかこ