小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
まつやちかこ
まつやちかこ
novelistID. 11072
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

gift of us

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 

 「うん、わかる。俺もまだ、正直よくわかんないしーーまあこれからだよ。ちょっとずつ実感していこう」
 「……あ、そうだ。写真もらったの」
 と言って、彼女がカバンから領収書などとともに出してきたのは、超音波検査の写真だった。黒地の背景に扇形に広がった白いものが写り、その中心からやや右にそれたあたりに、小さな黒い、丸いものがある。
 「これ? ……小っさいな」
 「ん、まだ7ミリか、それくらいだって。予定日は確定じゃないけど、来年の1月なか、ばぐらーー」
 一緒に写真を見ていた彼女の声が急に揺れて、途切れた。はっとして隣の彼女を見ると、唇が震えている。目にいっぱいにたまった涙が、見る間にあふれて流れ落ちる。
 写真から手を離し、彼女は両手で口を覆った。その震える肩を引き寄せて、抱きしめる。
 「友美」
 「…………よかった。できない体じゃなくて、よかったーー」
 後は言葉にならないかのように、再び口を覆って泣き続ける。その様子に、彼女がこれまでどれほど悩んで、辛い思いを抱えてきたのか、あらためて知らされる。
 「ん、よかった。よかったな、ほんとに」
 だから自分も、同じように言葉を繰り返す。右手で抱き寄せた彼女の頭を撫でながら。
 ひとしきり泣いて、少し落ち着いた様子の彼女が「いつ、知らせようかな」と言った。
 「心音の確認できてからでいいんじゃないか。それとも、念のため安定期に入るまで待つ?」
 「んーーでも、あと何ヶ月も黙ってる自信ないし、水くさいって言われちゃいそう。心音確認できてからにするよ」
 「わかった。それまでは秘密な」
 うん、とうなずいた彼女は、ここ数ヶ月の中では初めてじゃないかと思える、心からの笑顔になっていた。まだ涙の跡は残っていたけれど、自分が大好きな、とても可愛くきれいな表情だった。


                                - 終 -
作品名:gift of us 作家名:まつやちかこ