新連載!「熟女アンドロイドの恋」 プロローグ
「内藤さまと呼ぶのはやめてくれないか。きみより若いんだから普通でいいよ。研究は究極の命だよ」
「はい、では内藤さんとお呼びします。究極の命?不老不死ですか?」
「違うよ。きみは聞くところによるとあの事故の生き残りだったんだね。奇跡的に助かった四人の生き残り以外に一人女の子がいたことは報道されなかった。何故なんだろうって思うよ」
「私には辛い記憶しか残っていません。なぜ助かったのか、誰に助けられたのかも知らされていないので、ずっと幸運だったとしか思って来なかったんです」
「そうなのか。あの事故は不思議な事、いや解決されていない真実が隠されていると大きく報道したライターがその後失脚して行方不明になっている。彼は多分消されたのだろう」
「何故真実を探していた記者がそのようなことになったのでしょう?」
「それは分からない。解っては困ることだから捜査もされていない。今日は深くは話せないけど機会があれば二人だけで会って話したいと思っているから、時々通わせてもらうよ」
「はい、ありがとうございます。次の機会にゆっくりとお話を聞きたいです」
梓は内藤と名乗った男になぜか惹かれていた。
こんな世界で生きてきて、自分に接する男性はほぼみんな真実を話すような人たちではなかった。
しかし梓は、彼の話にはすべて真実の言葉で語られていると直感出来たのだ。
パーティーが終了してママから最後のお祝いの言葉と内藤に関してのアドバイスを聞いた。
きっと親しくしていたことを感じ取っていたのだろう。
「ねえ、梓、内藤という男性のことだけど、彼の紹介者はここのお客様でも変わり者で知っているでしょ某国の外交官のエイブラハム様なのよ。何も無いとは思うけど、一人の人に深入りすることはいけないからね、もちろんあなたは解っていると思うけど」
「はい、ありがとうございます。重々承知しておりますのでご心配なく」
そう返事した梓の表情から、ママは一抹の不安を拭えないでいた。
*「お断り」・・・航空機墜落事故は85年の日航機をモデルにしていますが、事実とはまったく関係が無く創作です。登場する国家名や地名は実際と同じですがあくまで物語として設定しています。
作品名:新連載!「熟女アンドロイドの恋」 プロローグ 作家名:てっしゅう