ハルコ ~1/2の恋~
それもハルコを悩ませる、身も心も女であるにもかかわらずハルヒコとして誘われるのはいかにも残念なのだが、ハルヒコとしてというのは口実でハルコとして誘ってくれたなのならば、嬉しいけれどケイタを忘れられなくなってしまいそうで怖いのだ。
結局、ハルコは店外への誘いはなにかと口実をつけて断った、ケイタと自分の関係は店の中だけに限定する事でなんとか自分自身の内なる葛藤と折り合いを付けて来たのだ。
「また来るよ」
ケイタは快活に……あるいはそう装っていただけなのかも知れないが……言った。
予定の半年が経ち、工事の終了とともに地元へ帰る時がやって来たのだ。
「別に地球の裏側に行っちゃうわけじゃないぜ、新幹線なら二時間もあれば来れる距離だよ」
ハルコが寂しそうにしているのを見て、ケイタはそう言ってくれるが、若い者を数人引き連れて半年間東京で仕事していたのだ、ベテランは地元に残っていると言ってもそちらでの仕事も忙しくなるだろう、新幹線で二時間と言っても停車駅まで出るのにも時間はかかるし、東京駅から新宿までの時間もある、そうそう来れるものではない……。
生まれつきの女であったなら想い人にすがって思いのたけをぶちまけられるのに……。
ハルコは性を間違えて産まれ付いてしまった悲哀を胸に仕舞い込んで、やっとの事でこれだけをケイタに言うことが出来た。
「無理しないで、ついでがあるときでいいから……それまで待ってる……」
作品名:ハルコ ~1/2の恋~ 作家名:ST