コードLP
ミドルシップ『V・A・A』
「ミスター・ポセイドン」
「はい、シスター・トリン」
「先ほど次世代ステルス回路の図面を確認しましたが」
「バイパス電力が一定の基準値に成るための」
「サブ・モーターコイルが正しく組み込まれていません」
「コンピュータ・チェックではハジかれてしまう原因です」
「私が接続をやり直してきますから」
「その間に、シグマ・ドライブのテストをするための」
「セットアップを済ませて下さい」
「シスター・トリン、お言葉ですが・・・」
「シグマ・ドライブは既にこの機体では何度も運用されています」
「いま、テストをする必要はないと思いますが」
「ポセイドン」
「他の存在が体験した実践データは、当てにはなりません」
「あなたを信用していない訳ではありませんが」
「私、トリンが実際に体験して確認しておきたいのです」
「イザという時は、自分しか頼りになりません」
「了解しました、シスター」
「実践テスト、初期値データを適用します」
「プラズマ・エンジンの出力を効率的に下げて下さい」
「長い航路に成ってもいいように」
「了解しました」
「シスター・トリン」
「はい、ミスター・ポセイドン」
「ワタクシの長い実践歴の中でも」
「あなたほどのマスターは初めてです」
「あなたへの呼称をキャプテン・トリンに変更する許可を下さい」
「許可します、ミスター・ポセイドン」
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
「シグマ・ドライブ、コイル接続完了しました」
「10秒後に出力臨界点に達します」
「キャプテン・トリン」
「シートに座ってエア・ベルトを固定して下さい」
「はい、ポセイドン」
・・・・・・・・
・・・・ブワッ・・・・
キュー・・ン・・
これがシグマ・ドライブ・・・
一瞬で空間を跳躍できるけれど、僅かな演算ミスで。
異空間に弾き飛ばされてしまう。その時は生還は出来ない。
「本当に大冒険ね・・・」
シュゥゥゥゥン・・・・
視界が正常に戻った。
「テストを確認しました。シグマ・ドライブ機関閉鎖」
「プラズマエンジンを起動して下さい」
「了解しましたキャプテン」
「私は、ボディメンテナスのためにメディカルルームに居ます」
「惑星ドーターに近づいたら私の頭脳サーキットに電信して下さい」
「了解しました、キャプテン・トリン」
・・・・・・・・
「500年・・・・」
私は既に、断片的に記憶を取り戻している。
「ペイン・・・・」
・・・・・・
なぜ涙がが出てくるの?
「LP45W・・・」
この名称は、私のデータベースに入っていた。
太古の昔の時代の、最初に造られた擬人。
「清くまっすぐに生き抜いた擬人・・・」
「私もそう生き抜きたい・・・」
また涙があふれだした。
ピィー・・・・・
「!」
もうメディカルチェックが済んだの?
全てのバイタルは正常値・・・
確かに、500年も眠っていたのだから。
リペアどころか、あらゆる機関が最新の装備に組み直されている。
「!」
ポセイドンが呼んでいるわ。
いよいよ大冒険の第一幕が始まるわね!
バシュンッ・・・
「キャプテン・トリン。ドーターが目視できましたが、どう・・」
「管制センターに進入許可を求めて下さい」
「許可されたら案内に従って大気圏突入」
「惑星のサイクルデータ・重力データは有りますね?」
「はい、キャプテン・トリン。指示どうりに実行します」
・・・・・・
これが惑星ドーター・・・
私の母星「チーズ」と同じように青く美しい。
ドーターとは「ムスメ」
女の子でなく、
息子と娘のムスメ。
「・・・・・・」
まさかね・・・・