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根岸 郁男
根岸 郁男
novelistID. 64631
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春に咲かない桜

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咲良「でもこの間、私の子供が欲しいからできたら結婚しようって」
健史「さぁ覚えていねえな。」
   睨んでいる咲良。

○健史の回想 ラブホテル
女A「(健史の方を顔だけ振り向いて)そのうちあんた、殺されるよ」
健史「フン、殺せるなら殺してみろよって」

○産婦人科 表
    咲良、出てくる。
    咲良、周囲を見渡す。
    誰もいない。

○産婦人科 院長室
    医師、電話器に手を掛ける。
    医師、一度手を離し宙を見る

○産婦人科 院長室 (回想)
医師「それは困る。警察官がまわりにいたら患者様が警戒するでしょ。無神経ですな。すれが原因で流産にでもなるお客様がいたら裁判沙汰ですよ。少しは考えてくれないと。
その方が着たら電話しますから」

○産婦人科 前
    咲良、タクシーを捕まえ、乗り込む。
    タクシー、市街地へ向かう

○八戸警察署 署内
    署内にいる軽米のところに事務員が小走りにくる
職員「軽米刑事さん、今、容疑者が病院をでたそうです」
軽米「判った。タクシーを一台用意してくれませんか」
職員「え」
軽米「パトカーで追跡したくないので」
職員「はぁ。でも行き先はわかるんですか」
軽米「大体はね。(写真を取り出し)ここ蕪嶋でしょ。俺一回、えんぶり観にきたことがあって帰りに拠った事があるんで。いいところだよね」
職員「さぁ。いつもいっているのでいいか悪いか。悪くはないですけどね、いいとこですよ」
    職員にっこり微笑む。
    軽米、再び背景が蕪嶋の咲良の写真を見る。
    赤い鳥居の前で微笑んでいる咲良。鳥居にはウミネコが数羽並んで停まっている

○蕪嶋
   赤い鳥居が象徴的な蕪嶋。寒々としている。
   ウミネコは一羽もいない。観光客もいない。風の音と波の音。
   タクシーが着き、咲良が降りる。
   赤い鳥居の前に立つ咲良。階段を上がっていく。
   中段くらいに差し掛かると腰の曲がった老婆が降りてくる。 
咲良「(老婆に)まだウミネコさん達、来ていないんですね」
老婆「(曲がった腰を少しあげ)んだまだだな。寒いすけ。二月も下旬になったらくるべさ
   腰は曲がっているが慣れているらしく要領よく降りていく。
   咲良のハイヒールが登り段を上がろうとして爪先が階段に引っかかり前に倒れ掛か
る。が態勢を取り直す。
老婆「あださん、大丈夫だか」
   老婆、振り向いて声をかける
咲良「ええ。ありがとうございます」
老婆「気をつけねば、あぶねよ。急だから」
咲良「はい」
   老婆、要領よく降りていく。
   上段にある赤い鳥居が見えてくる

○蕪嶋神社
   拝んでいる咲良。
   狛犬の前を過ぎ神社の反対側近くにきて遠くの海面を見る。
健史の声「結婚?なんだそりゃ」
咲良の声「赤ちゃんができたら結婚してくれるっていったじゃない。言ったことは嘘なの」
海の遠くを見つめる咲良の顔、きつくなる。

○咲良の部屋 居間兼台所 (夜)
   健史、食卓テーブルの椅子に座りTVをみながら
   健史「さぁ、しらねぇな。覚えていないねぇ。」
   健史、振り返り、テーブルの反対側にいる咲良を見る
   咲良、テーブルの縁に両手で押さえ、前にのめりだしている。
健史「いちいち覚えちゃいねぇんだよ。俺が言ったという証拠でもあんのかよ。あるなら出してみろよ、なぁ」
   と、立ち上がり咲良の頬を叩く。
   打たれた頬に手を当て唇を震わす咲良。
   健史、再び椅子に座りTVを観る
健史「おれ、明日からもうこねぇわ。おれと一緒に住みたいっていう女がいてさ、明日からそっちいくわ。咲良、おまえもどこの誰の子かもわからんような奴の子を孕んで不憫だだと思うが早く処分して新しい人生をやり直しな。」
咲良「(唇を震わせ)殺してやる」
   咲良の両手は後に回している。
   包丁を手にしている後手。
健史「(振り返り)はぁ、おれの耳が利き間違えたかな。もういっぺんいってくれ」
咲良「殺してやる」
健史「あそう、どうぞどうぞ。首でも差し出しましょうか「
   健史、TVをみたまま。背中を向けたまま、片手を上げて言う。
   咲良、一歩下がり、包丁を前に回す。少し突き出して、健史の背中へ勢いをつけて
ぶつかる。
顔と着衣に血が飛び跳ねる。
咲良「殺してやったわ」

○蕪嶋神社 
   タクシーが着き、軽米が降りる。
   コートの襟を立てる軽米。小走りに階段を上る。
   急ぎ足で階段を上っていく軽米の脚。
   神社入り口にいる咲良。
   入り口付近でミャーとウミネコの鳴く声がする。
咲良「あっ、ウミネコが来ている」
   左右を見るがウミネコの姿はない。
   上段まで登ってきた、軽米、はぁはぁと腰を曲げて息をしている。
   軽米、咲良をみる
軽米「古市 咲良さんですね」
   軽米、息を切らしながら言う。
   咲良、軽く頷く。
咲良「先ほど、ウミネコの鳴き音が聞こえたんです。少し探してみてもいいですか」
軽米「余り寒いとお腹の子に障ります。降りましょう。それにウミネコはまだ来ていないと思いますよ」
   軽米が咲良の手をとりゆっくり降りる。
   周辺からバサッと音がしてウミネコが空へ飛び立つ
咲良「やっぱりいたんだ。これから子作りの準備ですね」
   咲良、軽米、ウミネコが飛んでいった方をみている。
   寒空へ飛び立つウミネコ。

                                  終わり








    




作品名:春に咲かない桜 作家名:根岸 郁男