赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70
「ここにも目印が残ったままということは、2人はまだ草原に
居るということになるな」
「斜面を横に移動して、麓へ下っていった可能性はどうだ?」
「おねえちゃんのひとりは慣れている。
だが連れのもうひとりは、まったくの素人だ。
斜面に慣れている俺たちでさえ、ガスが巻いたときは安全のため登山道へ
戻る。
目印のテープを残していったほどの登山経験者だ。
登山道へ戻ったのなら、このテープもきっと回収していくだろう」
「ということはまだ、この悪天候の草原に居るのか、2人とも・・・」
ごくりと男たちが唾を呑み込む。
ひげの管理人がリュックサックから、ザイルを取り出す。
岩場を下ることも出来る、きわめて丈夫なものだ。
「念のために持ってきた。だがどうやら、こいつの出番の様だ。
9ミリ45mのザイルだ。
こいつを腰に巻き付けて、ピンと張り、横に展開しょう。
何か有ったらザイルを引いてくれ。それが全員への合図になる。
霧で足元が濡れて、滑る。
くれぐれも慎重に行動してくれ。
お姉ちゃんたちを見つける前に、俺たちが遭難したんじゃ
話にならねぇからな」
男たちが、ザイルを横に結んでいく。
頭上に閃光が走る。すぐ直後、激しい音が草原を突き抜けていく。
猶予はない。まもなく雷雲が頭上へやって来るだろう。
それまでのごく短い時間が、救助できるかどうかの分かれ目になる・・・
誰もが直感的にそう感じている。
「行こうか」
管理人の声を合図にザイルを腰に結び付けた男たちが、横へひろがっていく。
(71)へつづく
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 66~70 作家名:落合順平