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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「サスペンス劇場 悪魔の契約」 最終話

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「私のハンドバッグに少しお金が入っているからそれ頂戴」

「これはおれの金だろう。何言っているんだ」

「じゃあ、貸して」

「身勝手な奴だなあ~一緒に家に連れて行けよ。たんまりあるんだから。変なことしないから。じゃなきゃどこで泊まるって言うんだよ?」

「寒くないから、ここで朝までいる」

「食べるものはどうするんだ?トイレとか?」

「一日ぐらい我慢しなさいよ」

夜になって気温が下がって来た。さすがにここに居ると風邪を引くと考えた智也は、タクシーを呼んで甲府市内のホテルへ泊まることにした。
財布からクレジットカードを出して支払う。

「それ、おれのカードだぞ。勝手に使いやがって」

「あなたは別の部屋で寝てよ。朝になったら起こしに行くから」

部屋を別にしたことが仇になった。
志奈になった智也は深夜に抜け出し、自分の家に戻った。
窓ガラスを割って自宅へ入り、現金の入ったバッグにそのほかの大切なものを詰め込んで、外に出ようとしたときに車の灯りが点り、警察に逮捕された。

たまたま遅い時間に帰宅した住民が通報したのだ。
智也の家に女性が侵入したと。

自分の家に入ったと言えなかった志奈は、完全に強盗犯にされた。
翌朝、志奈が部屋に居ないことを知った智也は、直ぐに家に行ったのだと感じた。
慌てて、チェックアウトして、免許証に書かれている住所へタクシーで駆け付けた。

しかし、智也は悪魔の使いに顔を変えられている。
近所の誰からも声を掛けられることなく、事情を聞いて驚かされた。
警察に被害届を出すことは自分が殺人犯であることに気付かれる恐れがある。
知らぬ振りをして過ごすしかなかった。

再び青木ヶ原に戻って、今度は本当に自殺をしようと考えていた。
紐を木に掛け、足場を作って輪の中に首を通すと、後ろから声がした。

「やはり死のうと考えたのだな。懲りないやつだなあ、お前は」

振り返ると悪魔の使いがいた。

「もう止めてくれなくても良い。お前とは関わる必要がなくなった」

「志奈の身体に戻してやろう。そして智也はここで自殺する。罪を後悔してだ。遺書を書けばよい。少し刑に服すれば初犯だろうから自由になれる。タダでいいぞ。どうだ?」

「見返りもなく何故そうしてくれるのだ?」

「悪魔にも気まぐれを起こすときがあるということだ」

智也の中の志奈はもうどうでもよいと考えていた。言われるように遺書を書き、首を吊った。

次に目を覚ましたのは警察の拘置所の中だった。
完全黙秘を続けて、奪った金とカバンにあったすべてを没収され、両親が保証人になって釈放となった。

数か月が過ぎて落ち着きを取り戻した志奈は、二度と青木ヶ原樹海には行きたくないと思っていた。