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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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美しさをとどめていてほしい

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 麗からの電話で、留美は佐藤先生と会いたくないと言っているとの報告があった。確かに、どちらかと言えば何の関係もない私が、会いたいというのが不自然だろうと気づいた。
「今日暇してるから会いましょう」
私は留美のことが聞きたくて麗と会う約束をした。何かねだられる予感がして、銀行に寄り、5万円程の金を下ろした。
 麗は団地の近くで待つと言った。梅雨に入り、小雨が降っていた。
「おじさま今日はドライブしながら話をしましょう」
車に乗るとすぐに麗がそう言った。
「行きたいところがある」
「走っていればいい」
日曜の午後2時ころであった。時間的にはディズニーランドまで行く余裕もあった。
「ディズニーランド行こうか」
「待つの長いから好きじゃない」
 私はそのほかは若者が行きそうな場所が思いつかなかった。
「車を止めて話さない」
「車の中でいいんだね」
「この前お金使わせてしまったから、今日は節約。留美のことが心配なんでしょう」
私は麗から見透かされているようで、少し恥ずかしさを感じた。やはり、若い女性に関心を持ったことへの自分自身への抵抗感かも知れなかった。
「君のことも大切にしたいよ。私には子供がいないんだ。それで君たちといると時々錯覚するときがある。自分の子と感じたり、女性と感じたり・・」
「留美は認定を受けるみたい。あれだけ新聞に出ると、学校には行きずらいよ。転校しても、すぐに判るから」
「体の事は何か言わなかった」
「示談にしたらしい。汚されたといったよ」
「相手は本当に医師だったのかな」
「それはそうでしょう。新聞は嘘は書かないよ」
私は軽はずみなことをした留美が、なぜなのだと疑問を抱くばかりだった。私の隣には、留美と同じ年の麗が、留美と同じことに・・もし私がそんな欲情に駆り立てられたら、麗は後悔しないのだろうか?
 私は
「ありがとう」
と麗に言った。
その言葉が、麗を、私との援助交際という言葉から開放する私の歯止めだった。