美しさをとどめていてほしい
誘惑に迷う
麗とは月に1,2度会うことにした。私は留美の情報を麗から聞き出したかった。ところが麗は留美とは付き合っていないと言った。私が制服で来て欲しいと言わなかったために、麗は大人びた格好で来た。化粧もしていて、高校生には見えなかった。
「おじさま今日はおねだりしていい」
「どんなもの」
「ショルダーバック。ブランド物」
「それは、10万円くらいするだろう」
「いいでしょ」
「高校生なのだから、勉強のものならいいが・・」
「それだったら親が買ってくれる。親に頼めないからよ」
私の気持ちの中には、どうしても留美の事件のことが気になっていた。
「留美さんと連絡を取ってくれたら、3人で会う約束ができるかな、それだったらいいよ」
「なんだそんなこと、ホテルに行こうって言われるかと思った、だから私服できたのに」
「君は、経験があるの」
「なけりゃ言わないよ。でも、好きな人とだけ。1人だよ」
「なぜ、おじさんなんかとそこまで付き合うのかな、約束はデイトだけだったはず」
「おねだりできそうだし、先生なら安心できる」
「万引き遊びより悪いことだよ」
「分かってる。おじさまを試したかっただけ」
そんなことを言いながら、麗は私の体に寄り添ってきていた。口では教師時代の説教をしながら、甘えてくる麗の体を引き寄せていた。
私はバックを買うのは留美との約束が取れてからだと思いながらも、麗とショピングセンターに向かっていた。現金は持ち合わせていなかったが、カードを使うことにした。10万円を出てしまったが、麗の喜びの顔に私はなぜか喜びを感じていた。麗はバックを手にしたとき、高校生から大人の女に見えていた。留美も麗と同じ気持ちから援助交際をしたのだろうかと、私は麗の様子から想像した。
高校3年生。進学に向かって大事な時だ。私は突然、麗はどこに進学するのか聞いてみたくなった。
「君はどんな大学に行きたい」
「どこでもいい、偏差値55くらいだから、公務員か教師が希望」
「そう。こんな、くだらないことは止めなければだめになるよ」
「刺激、大人と同じことがしてみたい。お金がないからできない」
「そうだけど、我慢もしなけりゃ」
「おじさまでも私が裸になれば・・」
「確かに欲望は抑えれれないかもしれない」
「勉強ばっかりなんか退屈」
私は自分の高校生時代とはずいぶんかけ離れてしまったと感じた。人間は自分のために生きるのか、人のために生きるのかと問えば、今の私は自分のために生きるほうを選ぶかも知れない。
作品名:美しさをとどめていてほしい 作家名:吉葉ひろし