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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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美しさをとどめていてほしい

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留美



留美と私が彼女の名を知ったのは、彼女と初めて会った時から半年ほど過ぎた時であった。私に警察から電話があった。初めに電話を受けたのは妻であった。警察から電話が来ることなどなかったから、私は免許の書き換えの知らせだろうかと思いながら、妻から受話器を受け取った。
「親戚の娘さんのことですが、万引きで取り調べをしました。金額も少額で、店のほうでは示談に応じてくれました。娘さんがその金額は支払い、示談は成立しましたが、身元引受人が必要ですので、娘さんに聞きましたら、佐藤様のお名前を言いましたのでお越しいただけますか?本来なら両親の方がよいのですが、微妙な年ごろですから、それに母親の職業的なことを娘さんも心配されたのでしょう。反省されたからでしょう。よろしくお願いします」
「承知しました」
受話器を置くと
「何の電話?」
 と妻が言った。
 妻も警察からの電話でよほど気になったのだろう、私の近くから離れなかった。
「落し物が届いてるそうだ」
「何をなくされたのよ」
「雨傘、名前がフルネームで書いてあったから、電話番号を調べたらしい」
「お礼はしてくださいよ。今どき正直すぎる方だわ」
私は自分ながらうまいことが言えたと思った。
 妻には電話のことはそのまま伝えてもよかったが、何故か余計な心配はさせたくないという気持ちがあった。
 私は警察に車で向かいながら、親戚の娘を思い出していたが、高校生の娘はいなかった。
 警察につき、2階の取調室に案内された。
「この度は申し訳ありませんでした。両親に代わって、今後このようなことの起きないことをお約束し、よく注意をいたします」
「反省されているようですから、叩いたりしてはいけません。怒鳴らないでください」
「ご指導ありがとうございます」
 私はその言葉を終えて、初めて彼女の顔を見た。かすかに記憶があった。