良いんじゃないかな(双子と三つ子)
「たぁー ってさぁ…」
佐美さんが、多美さんの鼻の頭を、右手の人差し指で強めに押します。
「─ 三つ子たるもの、出掛ける時には、お揃いの服を着るべきだって、いつも力説してなかったっけ?」
「そ、そうだったかな…」
「お揃いコーデが出来ないって事は…三つ子失格って事で、良いよね」
「…え?」
奈美さんの左腕に、佐美さんは右腕を絡めました。
「なぁー」
「何ですか? 佐美さん」
「残念ながら私達、双子になっちゃったみたい」
「そうみたいですね」
口をパクパクする多美さん。
目で申し合わせた奈美さんと佐美さんは、部屋の出口に向かって歩き始めました。
「お出掛けは、2人でしましょうね。佐美さん」
「そうだね。」
「ちゃんと、ファッションもお揃いですし」
「双子コーデ、だもんねー♡」
ドアを閉める寸前、振り返った奈美さんが、笑わない目で多美さんに微笑みます。
「三つ子失格の多美さんは…お留守番して、お部屋を片付けて下さい。」
「そ、そんなぁ。。。」
作品名:良いんじゃないかな(双子と三つ子) 作家名:紀之介