⑨残念王子と闇のマル
「おーい、聞こえてるぞー。」
楓月が豪快に笑いながらカレンの肩を抱いて、麻流達に近づいてきた。
「で?このへんなのか?」
笑顔のまま明るくふるまっているけれど、楓月のその表情は強ばって見える。
理巧はぐるりと辺りを見回して、カレンと麻流に向き直った。
「噴石と雪崩で穴が見当たりませんが、現場は恐らくこの辺りだと思います。」
カレンも頷きながら、顎に手を添えて辺りを見回す。
「ん、確かに…。でも、ここに来るまで何も痕跡がなかったから、空様が流されたとは考えにくいよね。このへんにまだいらっしゃるのかな。」
麻流は地面に這いつくばって、微かな痕跡を探っている。
理巧は、再び笛を吹いた。
頭領への、つなぎの笛。
すると、その時、烏が大きな声を上げながら急降下してきた。
作品名:⑨残念王子と闇のマル 作家名:しずか