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てっしゅう
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「サスペンス物語 京都の恋」 第一話

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少しうつむき加減で悲しそうな表情を浮かべた美代子に尚樹は男として助けたいと感じた。
大人の女性を前にして何が出来るのか解らないがとにかく元気づけたいと思っていた。

「予定を決めてはらへんのやったら、京都案内しますよ。これでも何十回も来てるからよう知っている」

「ほんと!だったらお願いしようかしら。お礼にお昼はごちそうするから」

「ほんまですか?やった~」

笑顔の尚樹を見て美代子は昔を思い出していた。
それは遠い遠い昔のように感じられるが、自分には永久に付きまとう悲しい思い出でもあった。

美代子の両親は離婚をして、母親は実家のある京都へ戻り、父親は仕事の関係で東京へ転勤していた。兄がいて東京の大学をめざしていたので父について行き、自分は母と一緒に京都へ来て中学に通っていた。

京都と言っても広い。住んでいたのは西側にある福知山市だ。
美代子は母に頼んで京都市内の女子校へ通うことになった。憧れの女子校で女らしさを身につけたことで、田舎の福知山では人目を引く存在となっていた。

そんな中、母親が父と縁りを戻すと言い出した。
理由は自分の夫への誤解が解けたことと、実家に暮らす弟夫婦との折り合いが悪くなり出て行かざるを得なくなったことだ。
美代子は女子校をやめて転校するか、母の弟夫婦に無理を頼んで卒業まで住まわせてもらうかの選択が迫られた。

美代子は女子校を選択した。母親は東京の父のもとに帰った。
女子校はそのまま付属の短大へ進学できたので美代子は両親に無理を言って引き続き京都に残った。

やがて、大学になった時にサークル活動で知り合った一人の男性と恋仲になった。
彼は京都大学に通う将来有望な若者であったが、美代子には不幸な結果が待ち受ける相手でもあった。

尚樹たちは八坂神社にやって来た。

「ここは来たことある?」

「うん、昔にね」

「そう、ここの横に有名な三年坂とかあるから歩こうか?」

「いいところよね。清水にも行ってみたい」

「そうしよう」

坂を上って、清水寺にお参りして、帰ろうとしたときに美代子は手を引っ張った。

「ねえ、地主神社にお参りしようよ」

「ええ?あそこは縁結びやろう」

「知っているよ。だからゆくの」

「ふ~ん、好きな人がいるんや?」

「そういうことじゃなく、尚樹くんだっていつかは結婚したいでしょ?私もいつかはしたいって思うから、その時のためよ」

美代子はこのときは本当にそう感じてお参りしたいと思っていただけだった。