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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「サスペンス劇場 恩返し」 第三話

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「ルポライターの村林と言います。ちょっとお伺いしたいことがあるのですが」

「はい、何でしょう?」

「お隣の詩乃さんの事なんですが?」

「隣りの詩乃さん?誰のことを言われるのでしょう。お隣はもう数年前から空き家ですよ」

「ええ~昨夜泊まったんですよ。ご飯も食べましたし、お風呂も入りましたよ」

「それはおかしいです。隣の民家は電気も来ていないですし、水道もガスもずっと止められているんですよ」

「だったら、どうしてボクはご飯も食べれて、お風呂も入れたのでしょう?」

「それは解りませんが、役場で聞いてみたらいかがですが?」

何ということだ。信じられない。
詩乃の存在自体信じられないことだったが、さらに信じられないことを言われて自然と隆の足は役場へと向かっていた。
語り部どころの話ではなかった。

「村林と言います。お聞きしたいことがありまして伺いました」

「ではこちらへどうぞ」

応接ルームに案内されて、隆は去年と今年のことをすべて語った。
調べものをして戻って来た担当の所員は驚くべき話をした。

「村林さん、そちらのお宅は現在間違いなく誰も住まわれておりません。持ち主はすでに亡くなっていて、後を継がれた大友茂子さんという方が十年ほど前に亡くなってそれ以来いわば廃墟のようになっているんです。
街としては安く売りに出して都会からの引っ越しを待っているのですが、ここは畑も出来ないし、雪深いからなかなか難しいです」

「では、ボクが経験したことは幻だと?寝ぼけていると言われるのですね?」

「そういうわけではありませんが、村にいる人間で詩乃という女性に該当する人は住んでいませんから、他所から来て黙って住み込んでいるのだとすれば問題です。さっそく調べますので、ご同行されますか?」

「ぜひお願いします」

再び戻ってきてその民家の前に立つ。鍵は掛かっていないので、中に入る。
そして見たものは役場で言われたことを証明していた。
ほこりにまみれたまさに空き家という感じで、囲炉裏に火が入っていたような痕跡もなく、風呂場などは檜の浴槽も真っ黒にカビが生えて使った形跡すら窺えない。

「村林さんのお話が納得できない状況だと思われます。いかがですか?」

「そのようですね・・・何ということだ」

役所の人間と別れて、その足で語り部のところへ自分の経験した話を聞いてもらおうと考えた。
一通りのことを話す。
じっと聞いていた語り部は目を大きく見開き、隆を見据えて静かに口を開いた。

「お狐様のお帰りだったのじゃ」

それからの話は信じられないというか、恐怖感よりも畏れ多いことだと感じられた。