新・覇王伝_蒼剣の舞い【第2話】
「___強くなったな。あの時の子供が」
義勝は、清雅の剣を交わしながら肩で息をしていた。
「降参か?」
「まさか。黒抄二武将の吾を甘くみるなでない、蒼王。いや、清雅」
「上等だぜ」
必死に駆けた草原、今はもう枯れ果て面影はない。
桜、清雅の母子の穏やかな生活は、突然村に現れた男たちの手によって破られる。
未だ黒王となる前の黒狼と、そして義勝によって。
彼らの狙いは、母・桜が持っていた剣。
___逃がすな。あの女は間違いなく剣を持っている。探せ、何としても…!どんな手を使っても構わん。
黒狼の叫ぶ声が、響く。
桜は走った。幼い息子の手を引いて。
背後に迫る、黒狼と義勝。
「渡せ、その剣をっ」
振りかざした剣が、迷うことなく振り下ろされた。
何故?
剣一本の為に、何故?
薄れ行く意識の中で、幼い清雅の問いに答える者はなかった。
「清雅さまっ!」
「…っ!!」
『吾、目覚めん』
誰の声。しかも躯の中から聞こえてくる。
『吾、ドラゴンの意思なり』
握り締める龍王剣が、蒼く光ったのはその時だ。あれほど外れなかった左耳の耳飾りが、パリンと砕け散ったのとほぼ同時。
「…なぜ…お前が蒼剣を…」
義勝の驚きは、当然かも知れない。
やはり15年前、母子の元に蒼剣はあったのだ。だが、何故今になって目覚める。
あの時奪えなかったのは、その剣が蒼剣ではないと思ったからだ。覇王家から消え、平民の元にあるなど義勝には信じられなかった。
蒼剣は、覇王となる者を選び覇王へ導く____。蒼剣に伝わる伝説は、黒王をはじめ、四国の覇権を得たい者には知られた話。
____この男が…、そうだと云うのか?
「清雅さまっ」
星宿の叫びと同時に、鮮血が乾いた地を染めた。
勝負は互角の、相撃ち。
「さすがだ」
「フン。また…トドメを、ささねぇのか?俺は…、執念深いぜ…」
「それは、こっちも同じだ…」
義勝は、利き手を痛そうに押さえ馬に跨った。
「清雅さまっ」
振り返る清雅の目に、飛び込んでくる白虎、朱雀、そして___玄武。
いつのように嗤うその筈が、彼の躯は大地へと崩れ落ちる。
あの頃と違ったのは、彼には助けに来てくれる仲?がいた事だ。
作品名:新・覇王伝_蒼剣の舞い【第2話】 作家名:斑鳩青藍