新・覇王伝_蒼剣の舞い【第2話】
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黒抄・王城。
玉座の黒王・黒狼の顔が青ざめていく。
「今…何と云った…?義勝」
「蒼剣が見つかりましてございます。15年前、我々が牙の村で見たあの剣こそ蒼剣だったのです」
「だが、あれは違う。吾が見た蒼剣とは…」
そう、違っていたのだ。色も形も、似ても似つかぬもの。
黄金一色に蒼い石を填め込んだ見事な剣、それが黒狼が以前覇王家で見た蒼剣の姿だ。しかし、牙の村で見たものは、瑠璃色に龍の細工があるもの。
「陛下、間違いはありません。吾ははっきりと、蒼剣が目覚めるを見ました」
「…蒼剣が…あの清雅を選んだと…」
黒狼の握り締める手が、怒りと屈辱に震える。
「黒王陛下、蒼剣を奪いましょう」
「闇己どの」
「当然だっ…!奪うだけでは腹の虫が収まらぬわ」
「よろしいのでございますか?腹違いではございますが、末の弟君を」
「吾に、そのような者はおらぬ。好きにせよ」
「畏まりましてございます、我が覇王陛下」
ニヤリと笑う闇己は、義勝を嘲りを含めて止めた。
「貴殿も、老いたものだな。蒼王の息の根を止め損なうとは…!」
「___人の事より、自分の心配をしたらどうかな?闇己どの。貴殿もその二武将だと忘れておるまい。悉く蒼国攻めにに失敗、蒼剣も奪えない。黒王陛下はさぞ憤られているだろうよ。それが何を意味するか、理解らぬでもなかろう?」
「…義勝…っ」
闇己の顔が、屈辱に彩られていく。
「もう一つ忠告しておこう。あの蒼王、とんでもない男かも知れんぞ」
「怖気づいたか…」
「理解らなければいい」
義勝は闇己を一瞥して去った。
___おのれ…っ。
闇己は、唇を噛み締め義勝の後ろ姿を睨んでいた。
月明かりの差し込む廊下を、一人の少年が進む。
金褐色の髪に、未だ若干幼さが残る面立ちの少年の名は拓海。
彼は、一つの部屋の前で立ち止まり、静かに扉を押した。
その視線の先、寝台に横たわる人影に拓海は近づいた。
「______清雅さま」
性格に問題ありと拓海の評価にある彼は、青白い顔でそこにいた。
その寝顔は苦痛に歪められ、意識のないものの何かと戦っている、そんな表情だ。
未だ彼に一度も名前で呼ばれず、『玄武の息子』とか『半人前』としか呼ばれていた
が、そんな事はどうでもいいと思う。
作品名:新・覇王伝_蒼剣の舞い【第2話】 作家名:斑鳩青藍