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新・覇王伝_蒼剣の舞い【第2話】

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 牙の村___村と云っても、村人はもう住んでいない。
 東領の小さな村は、すっかり廃墟と化していた。
 地は乾き、砂埃が少しの風でも舞い上がる。
 まるで、戦場の跡のような地。ここに、嘗て緑が茂り、小鳥が囀る村があったなど感じさせないほどに。
 「___義勝さま。本当にこんな所に、蒼王が来るんで?」
 「さぁな。黒王さまの命令だからな」
 馬上にて、男は周囲を見回した。
 何もない村である。今更、何があるのか。
 この時、義勝は五十過ぎ、髪に白いものが交じり始めたが黒王二武将と称される腕は今でも衰えてはいない。
 ___しかし、こんな村と蒼王が何の関係があると。
 『__義勝、牙の村に行くのだ?』
 『牙の村、でございますか?黒王陛下』
 『そうだ。蒼王は必ずやってくる。お前が来ると知ればな』
 黒王・黒狼は、そういって自信たっぷりに嗤っていた。
 あの日から、15年___ここはあのまま時間を止めたまま。
 主の為に忠誠の限りを尽くす、黒抄二武将として当然の如く駆け、剣を振るい、道を開く。吾の人生は間違ってはいない。
 だが、嫌でも思い出す。
 彼の脳裏に浮かぶのは、一人の少年だ。
 母親を庇い、共に散った少年。
 『…許さない。お前も、黒狼も』
 そう云って、血塗れの剣を握りしめたあの少年の名前は何だったか。
 ___ふ、吾も老いたか?久しぶりにこの地に来て、感傷に耽るなど。
 「来たか…」
 視線を上げた時、待ち人は彼らの前にいた。
 「___まさか、お前が乗り込んでくるとはな。今度は、黒狼は一緒じゃないようだな?義勝」
 「蒼王は命知らずと聞いたが、その通りなのか?」
 「その言葉そのまま返すぜ」
 チャキッ…と、剣を鞘から抜く音がした。
 蒼い龍が柄に巻き付くように刀身に向かって伸びる剣。
 「___その剣は…」
 「清雅さま」
 「清雅…?」
 義勝の記憶が、一気に蘇る。
 あの時、少年が手にした剣。母が叫んだ少年の名前。
 ___清雅。
 「思い出したようだな?俺は忘れちゃいなかったぜ。お前たちがここで何をしたか…!」
 「まさか、蒼王になっていたとはな。死んだと思っていたが」
 「残念だったな。トドメをさすべきだったものを」
 「どこでどう違ったのか…」
 「そうしたのは、お前たちだろうが」