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新・覇王伝_蒼剣の舞い【第2話】

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          ※※※※※※※※※※
 西領___嘗てそう呼ばれた砂漠とオアシス。
 中心部以外は、砂に埋もれ、それは日々進行している。
 『この国は、喰われようとしているのだ』
 そう云った男の顔は、どこか楽しそうに見えた。喰われようとしている___まさに、王都のすぐ側まで迫る砂の脅威は、ある一種の怪物に見える。
 その男にとっては、この国の運命などどうなろうといいように、笑む顔は残酷だ。
 「____お召しと伺い参上致しました、白王陛下」
 「蒼剣の場所、理解ったよ。心宿」
 その時と同じように、彼は笑みを浮かべていた。
 白い布を被り、衣装も白い近い長衣を纏い、覗く金の髪と金の双眸と男でも息を呑む美貌ながら、漂うぞっとするような冷気を纏う現西領の主。
 覇王家第二子として生まれ、高い異能をもち、覇王家崩壊後は白王として西領の主となった聖連・ファン・ウォン。
 「蒼剣が…」
 「やはり、東領にあったよ。しかも姿を変えてね。ふふ、25年間理解らなかった筈だよ。この聖連の目を欺くなどさすがドラゴンだ」
 『この国は、喰われようとしている』と云った時のままに、聖連は嗤った。
 「白王陛下、何卒吾に蒼剣奪取の役目を」
 「やはり恋しいか?元々は一つだった蒼剣が、いや、ドラゴンの転生の方か?」
 「白王陛下、吾には何の事か…」
 聖連に劣らぬ美貌が、不意に曇る。
 肩に掛かる金髪に、碧色の双眸、瑠璃色の装具はまるで鱗のように躯を覆う。
 ドラゴン七星として目覚めた男は、聖連の側近となっていたが過去の記憶はなかった。
 四国守護と云う本来の役目は、心宿から消えていた。
 「お前には、重要な役目がある。無駄な力は使っては困る」
 聖連の金の眸が紅く彩られ、
 「ぐぁ…っ…!!」
 心宿の躯を引き裂けかねない激痛。
 「殺しはしないよ。お前は、吾には重要だからね。だが逆らえば___」
 「白王…陛下…っ」
 メキメキと何かが裂ける音。
 人の姿から、鱗に覆われた別の躯へと。
 「ふふ、獣化は始まっていたようだな?ま、無理もないが。蒼剣と25年も離れ、アレに毒されていればな。ドラゴンの転生を殺せ、心宿。その呪縛を解かれたければな」
 「…仰せのままに…」
 人の姿に戻った心宿は、肩で息をしながら膝を折った。