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第一回・怖いもの選手権顛末記

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「お雪……そうか、すまねぇ、実は俺ぁ、あの晩の事を本当は夢だったなんて思っちゃいなかった、ずっと心に留めてきたんだ、だけど、つい気を緩めちまった……さぁ、俺の命を取るなら取れ、本当ならあの晩に取られていた命、それを今の今まで取らずにおいてくれたばかりか、幸せな日々をくれたんだ、俺ぁ、お前に命を取られるならちっとも構わねぇよ」
「あんた…………ああ、あたしには出来ない、この子達から父親を奪うことも、愛しいあんたの命を取ることも……あたしの心はもう雪女の心じゃない、人の心を知ってしまったんだよ……でも、あたしは雪女、正体を知られたからには一緒に暮らして行く事は出来ないんだよ」
 お雪は家を飛び出し、雪の中に消えて行った……。

 得点が表示され始める。
 親子の情だけでなく男女の情をも表現した悲しく、厳しい物語は観客の心を鷲づかみにし、得点はぐんぐんと伸びて行く……鬼婆の2,335点を越え、お菊の2,353点に迫る……が、2,340を超えたところで伸び悩む、2,341……42……43……、誰もがここまでかと思ったその時、ステージから冷たい風が吹きつけ、会場の温度を一気に下げた、一度は止まったかのように見えた得点はぐんぐんと伸びてとうとう2,500に、満点だ!

 だが……。
 司会のデーモンが現われない、しばし冷たい時間が過ぎて行く、十分後、ようやくデーモンが登場した。
「なんと満点が出たな、しかし、今、主催者側と協議をして来たところだ、パフォーマンスは素晴らしかったが、最後にお雪殿は功を急いだ……冷気を観客に吹きかけるのは違反、かまいたち殿を失格にしておいてこちらを認めるわけには行かない、したがって、『雪女』のお雪殿は失格とすることに決まった……従って、優勝者は『番町皿屋敷』のお菊殿だ!」

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「お雪さん……」
 肩を落とすお雪にお菊はどう声をかけてやったらよいやらわからなかった。
「いいのよ、お菊さん、デーモンさんの言うとおりよ、あと10点、あと10点さえあれば優勝だと思ったら、思わず冷気を吐いちゃった、かまいたちさんの例もあるもの、冷気を吐いたら違反だってわかってたのにね……優勝おめでとう、来年こそ負けないわよ」

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「第一回・怖いもの選手権、栄えある優勝者は『番町皿屋敷』お菊殿!」
 デーモン夕暮に紹介されてお菊は前に進み出た……すーっと宙を浮きながら。
「お菊殿には主催者から優勝のプレートが贈呈される、おめでとう」
 お菊は差し出されたプレートをうやうやしく受け取り……ハッと気がついた。
「これって……お皿……このお皿なら青山家の家宝にも勝る立派なお皿……十枚目よ……」
 そうつぶやいたお菊は、表彰式の真っ最中にふっと消えてしまった。

 成仏してしまったのだ。

「しまった、優勝カップにすべきだった、お菊さんが出てくれる事はわかっていたのに!」
 心ならずもディフェンディング・チャンピオンを失ってしまった主催者は歯噛みして悔やんだ……。

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 そして二十年後……。
 肌が抜ける様に白い、清楚で落ち着いた美貌を持つアイドルが世に躍り出た。
 その名も井戸菊江、そう、お菊の生まれ変わりである。
 菊江にお菊の生まれ変わりとしての記憶は無いものの、アイドルらしからぬ慎ましやかな性格、歳に似合わぬたおやかな物腰、そして端正なルックスは世の男達を虜にしている。

「みなさ~ん、私なんかのコンサートにこんなに多勢の方に来て頂いてありがとうございました~、最後にこの曲を歌います、聴いて下さ~い『恋のKO テン・カウント』で~す!」