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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「サスペンス劇場 身代わりの愛」 第二話

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「妹として、親族として会われるならご自由になされませ。今は大切なお身上であることをお忘れなく。天皇は都を難波に移すとすでに触れを出しております。ご存じでございましょう。今ここで遷都することは得策ではございませんが、意思は固いようです。蘇我倉山田石川麻呂(そがのくらやまだいしかわまろ=中大兄の義父)殿も反対派を言いくるめておるそうで、皇子が反対しても通らぬ情勢に思われます」

「義父が・・・人徳のある御仁だから人は私より従うだろう。乙巳の変では同じ蘇我家として考えるところもあったろうに協力してくれたので頼りにはしているが、そちはこれからのことをどう考えておるのだ?」

「申し上げます。まずは遷都し、時期を見て倭京(今の飛鳥板蓋宮)に遷りましょう」

「どのぐらい待てばよいのじゃ?」

「それは・・・数年のうちにしかと申せませぬ」

「叔父上を亡きものにするということか?」

「畏れ多いことを・・・周りを切り崩して孤立させれば、おのずからみんなは皇子に従うと思われます」

「そうか、まずは人徳だな。鎌足に任せよう」

「ありがたきお言葉。間人さまのことはお忘れ下されませ」

中大兄は鎌足の言葉に、自分の立場を考えなければならないと重々承知していたが、夢にまで出てくる間人への思いを断ち切ることは耐えきれないと思うようになっていた。

孝徳天皇には有間(ありま)という武芸に秀でた皇子がいた。中大兄の娘であるうののさらら皇女(母方の父親が蘇我倉山田石川麻呂にあたる)と仲が良かった。
間人は夫である孝徳天皇には指一本触れさせなかった。自分は皇后として役目を果たすけど、妻としては果さないという条件で嫁いだからだ。

鎌足は中大兄の娘であり才媛兼備のうののさららと有間皇子との婚姻を考えていた。
次期天皇に一番近い中大兄には腹違いの弟がいた。鎌足はすべてにこの弟の方が兄より秀でていることを見抜いている。
自分を嫌っている弟が即位するようなことがあっては危険だと感じて、現天皇の皇子とうののさららが結婚すれば、中大兄亡きあとは有間が継ぐ。そして自分は太政大臣となって補佐をし、ゆくゆくは有間皇子に自分の娘を妃として嫁がせれば(この時代天皇は皇后のほかに妃と濱と呼ばれる第二第三夫人を持つのが当たり前となっていた)、中臣家は安泰となる

そしてもう一つ、弟を懐柔するために、中大兄のもう一人の娘うののさららの姉にあたる大田皇女(おおたのひめみこ)を嫁がせた。
やがて有間皇子の謀反でうののさららは引き離され、中大兄の弟の大海人皇子(おおあまのみこ)に嫁ぐ。姉妹で一人の男性の妃となった異常事態が中大兄と鎌足の心境を現している。