既視感。(双子と三つ子)
「は・な・ちゃーん」
名前を呼ぶ声に、私は反応しました。
「さ、多美さん?」
「ほら いたー」
私達を指差さす背後には、佐美さんと奈美さんの姿。
3人は、私と同級生の三つ子さんでした。
─ 何の偶然か、その姿形は 複写したかの様に私にそっくりです。
長女の奈美さんが、次女の多美さんの耳たぶを引っ張ります。
「公共の場で、大きな声を出さないで下さい。」
ベンチの前に移動した三女の佐美さんは、座っている2人に問い掛けました。
「どっちが あぁで、どっちが かぁ?」
佳子ちゃんが、勢い良く手を上げます。
「かぁは私です。佐美姉さま!」
ハグを始める佳子ちゃんと佐美さん。
その様子を目で追っていた私は、ある事に気が付きます。
「え?!」
私はベンチから立ち上がりました。
双子さん、三つ子さん、自分の順で、コーデを確認します。
「ろ、6人の服…おんなじ!?」
言葉に反応した5人は、お互いと自分の服装を見比べました。
「ほんとうだ!!」
奈美さんと多美さんが、顔を見合わせます。
「こんな事って、あるんですねぇ」
「双子ちゃんや華ちゃんとは、何の示し合わせもしてないのに…」
両腕を開いた佐美さんに、佳子ちゃんは抱き付きました。
「… これは運命よね!」
「凄いです♡」
亜子さんが、何気に呟きます。
「この状況で、1人だけ違う服だったら…かなり恥ずかしいかも だね」
同じ姿形の6人中で、5人は お揃いなのに1人だけ服装が別。
そんな悪目立ちの状況に、私は身震いしました。
「今日のコーデ、皆と同じで、本当に良かったぁ。。。」
作品名:既視感。(双子と三つ子) 作家名:紀之介