狗賓の落書(二百文字SS集)
春日呵々
麗らかなる春の日。
惰眠より目覚めてみれば、なんと部屋が巨大化していた。
十二畳たらずのわが家の居間が、まるで体育館のごとし。
日ごろ妻より、もう少し広い家に住みたいと苛まれるこの身を哀れんだ、おっちょこちょいの神様の仕業か。
小山ほどもあるソファのうえで途方にくれていると、
ひそ
と背後よりの気配。
おののいて振り仰げば、いつも妻の目をぬすんで虐待しているわが家のトラ猫が嬉しそうに俺を見て、にゃァ、と鳴いた。
作品名:狗賓の落書(二百文字SS集) 作家名:Joe le 卓司