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選び取り

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 ところで、昭夫さんは、モニターの映像についてのみ疑問を呈されました。しかし、実は今まで私が説明してきた大半の事について、疑義を呈そうと思えば呈す事ができるのかも知れません。
 例えば、復讐の後私はのうのうと余生を全うするかもしれない。例えば、誰かが踏み込んできたら私は容赦なくボタンを三つとも押すかもしれない。例えば、「選び取り」が長引いたら適当な所で切り上げてボタンを押してしまうかもしれない。例えば、そもそも復讐の動機になっている祖父の話というのは本当なのか。私が嘘をついているかもと言う疑念を一度持ってしまえば、それを拭うのは難しいものです。
 しかし、非常にへんてこな話だと思いますが、そこは私を信じていただきたいのです。なぜ、復讐の実行者である私は、警察などに踏み込まれるリスクを高めてまでも説明に時間を費やしているのか。なぜ、冥菜ちゃんを復讐に反対する人間に預けたのか。なぜ、動機から復讐方法から復讐後のことまでこと細かに説明をしているのか。なぜ、低確率でしか起こり得ない復讐時の細かな事項まで取り決めをしたのか。なぜ、皆さんのご質問の時間を取り、直接私の口から答えさせていただいたのか。
 これは皆さんに、気持ちよく復讐されてもらいたいからなのです。これまで、復讐と言う回りくどい言い方をしてきましたが、いうなれば皆さんは殺されるわけです。殺されることがいやなのは当たり前です。私でもわかります。ですから、殺される以外のことについては、後々のことも含め可能な限り明快にして、可能な限りご理解、ご納得いただいた上で殺されていただこう、こう考えているのです。
 ですが、これから復讐する人間を信じろ、めちゃくちゃな話だと私自身も正直思います。でも、それでも、だとしても、私は皆さんに信じていただきたいのです。全てが、今話しているこの話すらも、信じて貰うための三文芝居だ、そう思われる方もいるかもしれません。その方に対しては、全く無駄なことかもしれません。それでも、それでも私は、この通り、平身低頭してでもお願い申し上げたいのです。


 私を信じて、殺されてください。


 ……説明も終了し、ご質問にもお答えさせていただきました。それでは、これから「選び取り」の方を始めていきたいと思います。


 もしもし。うん、ちゃんと映ってる。こっちの準備もできたから始めて。じゃ。



 ご覧の通り、冥菜ちゃんがアイテムを掴みました。――さん、さようなら。

(了)
作品名:選び取り 作家名:六色塔