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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 50~55

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 促された清子が、梯子を天空に向かって登りはじめる。
黙って見つめていた恭子も、リュックサックを地面に放り出す。
風雪にささくれた木材の感触をしっかり確かめながら、2人がゆっくり
2階の屋根までたどり着く。
最初に頂点へ着いた清子が、ひらりと2階の屋根に降り立つ。

 「ほう・・・見かけによらず、身の軽い子たちだ。
 どれ。わしも、久々に登ってみるかな」

 後から屋根まで登ってきたヒゲの管理人が、ヒョイと清子の細い腰を
捕まえる。
『え?』驚ろいた顔を見せる清子を、そのまま肩まで担ぎ上げる。
管理人がスタスタと屋根の斜面を歩き、一番の高みまで登っていく。

 「どうだ、お譲ちゃん。
 あんたたちが、6~7時間かけて歩いてきた下界が、一望に見えるだろう。
 俺より高い位置にいるお前さんは、オレも見たことのない絶景が
 見えるはずだ。
 そこからの気分はどうだ。お嬢ちゃん」

 「すごく素敵。もう最高です!。生まれて初めて見るすごい景色です。
 清子はもう山登りが、病みつきになってしまいそうです!」

 清子の声が、山小舎の空へ響いていく。
ガスが晴れてきた。山容をあらわにしてきた三国山の雪渓が残る山肌へ、
こだまを呼びながら、清子の歓声が響き渡っていく。


(56)へつづく