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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「月ヶ瀬」 第十九話

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和田保の死体が見つかったことは、役場にも知らせが入った。三津夫は驚きを隠せないままに、黙々と佐藤警部から頼まれた仕事を経理の担当とこなしていた。
村長が近づいてきて三津夫に話しかける。

「久保君、偉いことになったな。死んだ弁護士は今君が調べていることと関係してたんやろう?みんなは清一さんが犯人やろってさわいどるけど、そんなことあらへんよな?」

「姿が見えへんのはおかしいと思いませんか、村長。奥さんも一緒に行方不明や。どうなってるのか分からへんけど、経理の不正が見つかったら税務署と奈良県警から合同で調べに来ますから、大騒動になりますよ」

「経理の不正?それやったら辞職した会田が犯人やろ?なんで清一さんが疑われるんや?」

「村長は知らへんのですか?警察はすでに不正の証言も得て私に調べるように指示したんですよ。当時の村長やった清一さんが使い込みしたことは明白だと思ってます」

「なんやて!そないなこと誰が話したんや警察に。ここで税務署や警察が来て大騒ぎになったら、温泉施設の開発計画はとん挫するやないか、絶対にそんなことさせへんで。お前は証拠が消されていて見つけられへんかったって報告するんや。言ってる意味わかるな?」

「何をいわはるんですか?殺人事件になってるんですよ。月ヶ瀬村民は誠心誠意警察に協力して事件解決させなあかんやろ。あんたそれでも村長か!」

経理の担当者も三津夫に同調した。
様子を伺っていた他の事務員たちもお互いに顔を見合わせながら、村長に詰め寄った。

「久保さんの仕事を邪魔しないで下さい」

「お前ら何言うとんのか解っとるんか!村の恥さらすんやぞ」

「ええやないですか。人の命に代えられるほどの面子なんてもうありませんよ。私ら我慢してきたけど三津夫さんの言葉に目が覚めました。昔からの習慣を改めて開けた村にしていかな未来はありませんよ。そうやろ、みんな!」

「お~」

拍手が沸いた。その時三津夫が奇声を上げた。

「あった~!見つけたぞ!」

まったく違う場所に隠されていた二重帳簿が見つかったのだ。

「これ見てみい、二重帳簿や。こんなことしてたんやで。辞めさせられた会田さんは万が一を見越して隠しとったんやろ。清一さんはとっくに処分されていると思っとるやろから、これでアウトや!」

村長は目の前に現れた帳簿を見て自身観念した。