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もやもや病 8

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74 本人の集い

次男の患者会には
患者本人の集う日があって、1泊で全国からの参加者を募っていた…

私は、3回目が家の近くだったことから、その3回目から毎年参加してきた、10年ぐらい

参加者は、患者本人が20数人、親が役員を含めて10人ぐらい

この中でも言われる
お宅の○○君なら一人で参加できるでしょう^^
お母さんは過保護なんじゃないの?
ずっと笑ってごまかしてきた
この本人の集まりには、私は何度も複雑な思いをしてきている

次男には、お母さんは一緒に行くけど、四六時中あなたを見ている訳じゃないから、お母さんを気にしなくて良いから…そう言ってはおいた、意識して離れているようにもしていた

本部の役員には、子どもが小さいときに亡くなってしまっている夫婦と
結婚して赤ちゃんを産んでいるお嬢さんのお母さんと、最近結婚したお嬢さんのお父さんのの4人だった

ずっと前に、行方不明の子どもさんの捜索をテレビで呼びかけていた番組があった
その中に知的レベルの落ちている子どもさんが、帰ってこないというお母さんが呼びかけていたのが印象に残っていた

私は、次男を一か八かで一人で新幹線に乗せることは出来ない
トイレが近くて、行きたいと言ってから待つことが出来る時間が、脳梗塞の後遺症で普通より短いという次男が、もしも新大阪で降りる直前にトイレに入ってしまったら…

大阪行きの電車に乗せたとしても、もしもなにかのトラブルが起きたら、集合場所に着けなかったら…そんなはらはらドキドキをするつもりにはなれなかった

仙台に行ったときのホームで待っているときのもしもここで倒れたら前の人を押す形で倒れたらという怖さは、その時には思うことはなかった怖さだったけど…
子どもじゃないからこそのトラブルはきりがない心配だったと思う

実際、何人かの親に頼まれて、子ども達の引率のように出掛けた年もあったけれど、東京駅でさえ会えなかったりしたこともあって、私のイライラがよくわかる次男は、僕たちだけで行こうと、他の人と行くのをいやがったりもした

この集まりは比較的軽度の人が自分で来ることが出来るか、あるいは私のように親と一緒に来るかという、そういう人しか参加できないようなものだ…
その軽度の人が集まるからこその問題もある…
私はその場では次男の付き添いとしての立場だから、企画の内容も知らずに行くのだけれど、納得できないこともままあった…でも私の意見が通るところではなかった

私の心の中に、子どもが亡くなってしまった人にはわからない現実の思い
結婚して普通に家庭生活を営んでいる軽度の人にはわからない思い
どちらも女の子の結婚することが出来た親にはわからないという思いがくすぶり溜まってきていた

私の我が侭勝手な考え方だろうか…

患者本人の集いは、3,4回が終わった頃から、企画を患者本人に任せようということになって…

やりたいと思った人が数人先頭に立って進行をするようになったけれど…

はじめての参加者の中で、雰囲気を和ませようというのはよくわかるけれど、人間関係に恵まれない人が集まっていることもあるのに、難しいと思うけど、交流会の進行…
ある親が発言した中に
君たちは運転免許を取ると世界が広がるよ、と言った
しょうがい者用の、例えばハンドルを片手で回すことも出来る装置だって取り付けることが出来る…

おいおい、違うだろうと思う…

その人は、相談窓口ではないから、そして男の人と言う立場でものを考えているかもしれないけれど、自分の子どもが軽度だったら出来たことがみんなに出来るというものでもない…

脳血管疾患の患者と言うことをいつも、欲目で見ているような気がする
元気で良かった…って

この集いには、今まで車椅子の人は来たことがない、当然寝たきりの人も居ない
18から30才対象に声をかけるけれど、もちろん40でも50でもOK
その人が、家族が新幹線の乗り場まで送ってくることはあっても、ほとんどの人は自力で集合場所に来る

来られる人しか来ないような集まり
けれど、だからといって、それは健常である訳じゃなく
自分達は、病気と思えないほど元気であっても、冷静に見ている私たちには、これは確かに病気のせいだと思われることもあるのに、それに対する認識を持とうとしていない

本当に健常に近い本人達は、この会のこういう集まりに来る必要がないのが本当のところだ
近所や職場、社会に普通に人間関係を持つことが出来、孤独な思いをしなかったら、いくらかの費用をかけて何も病気の本人達の集まりに来る必要など感じないのが本音の所だろうと、私は思う

それをお金もかけて、時間も割いて集まってくるにはそれなりの思いがある…はず

彼女が出来ないから、彼女が欲しい、彼氏が欲しいのも同じだ…
夜中まで部屋に入り浸っている若い人達
(寝不足で体調を崩す人も居て…)(またそれは別の話…)
元気に見えても、一般社会でやって行きにくい人が集まっていると言うことの認識

足を引いて歩く男の子が私に質問をしてきた
親は反対しているけど、免許を取りたいと思うけど、どう思いますか?
友だちがいつも送ってくれるけど、一人で動きたいから…

教習所は、お金をいっぱい使って免許が取れた人は居る、いっぱい居る…
でもね、身分証明にしか使っていない免許って人も多くいるのよ

それはね、路上に出て走るとき、自分の車だけではないから、対向車があり、後続車があり、あとどのくらいで車がこちらに来るかのとっさの判断に怖くなることがあって…
その運転中のストレスはかなり大きい
もしも発作が起きたら、自分だけじゃなく、周りにぶつかることだって有る
そういう判断があなたに出来るかどうかをご両親はわかるから反対するんじゃないの?
おばさんも反対、お友達には、すまないと思うのなら、他のことでお友達の力になることを考えた方が良いと思うわ

彼は納得しただろうか
そばで聞いていた次男、帰りの電車で
あの子が免許取れるなら、僕はとっくにとってるよ、見るからに重い病気じゃないか…

作品名:もやもや病 8 作家名:とことん