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もやもや病 3

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23 リハビリ

次男は10歳の終わりに、脳室内出血で入院中に、脳梗塞を起こした

実際の所、脳梗塞を起こした日がいつなのか私は覚えていない

覚えていないと言うより、いつ、次男が脳梗塞を起こしたかと、誰にも聞いていないような気がする
知らないうちに、次男は右手に麻痺が起きていて
知らないうちに、リハビリすることになってベッドサイドにリハビリ担当の作業療法士(OT)さんが来た
この時期のことを単に私が覚えていないのか、本当に教えてもらわなかったのか、今ではわからない
作業療法士さんは、今でも年賀状の交換があるけれど、その時の印象はとても感じの悪い女性だった
今はともかく、その当時はまだ、インフォームドコンセントなど関係のない時代だったのかもしれない

これが何のための訓練なのかと言うことも聞かされず、病室に行ってみるとリハビリ室に居ますという感じで、部屋に行くと
次男は、脳卒中のお年寄りに混じって、3,4人でテーブルに座っていて
お皿に入れた丸い物をスプーンですくって他のお皿に移す練習
右手が麻痺しているのに、スプーンなど握れないと思って見ていたが、テープのようなもので固定してスプーンを持たせて、移し替える練習

次男は、集中力が欠けているので、1,2回それをすると、ぼーと空を見る
肩をたたいてそれを続けるように促したり、言葉で注意したり

1つの作業にかかる時間はそれは見ていられないほど…

洗濯ばさみを挟んであるボール紙があって
その洗濯ばさみを取ってはずす練習
取ったと思ったらそれをまたボール紙に付ける
それは最初の頃にはこんなこと出来るのか?と思うほど力のいる作業だった

前後して、組紐のような糸を使って、長いベルトを織り上げていくという作業
たいした模様ではないけれど、手に紐を持って、場所を変えることで糸がベルトに織り上げられていく
それもずいぶんと時間がかかった…

リハビリ室の中には、貼り絵や、手芸品が並んで、みんな患者さんが作った物だと展示されていた、幼稚園の展示のようだと、その頃ひねくれていた私は思った

次男の側では、前あきのパジャマや下着のボタンをはめる練習をしているおじさんが居て
1度になんかしない、次男と同じように、やりかけては空を見て、1つ終えたらため息をついて
手はいつも止まっている
これで知的にレベルが落ちていなかったら反発もするのだろうか
プライドを失っていなかったら、こんなこと出来るかと怒るのだろうか

OTの先生は決して優しくはなく、厳しくて
私はそこに付き添っているのが苦痛だった

もうお母さんは傍に居ないで下さいと言われたか、自主的にそうしたか、勝手に親はそこまで行ってはいけないと周りを見て判断したか忘れたけれど、家族の人が座るイスでその時間が過ぎるのを待った

隣のおじさんの奥様達に次男はいくつかと聞かれ、どうしてリハビリが必要なことになったのかと聞かれ、小さいのにかわいそうにねと言うことで話が終わる…

私は、黙って待つよりその方が気が紛れたからどうとも思わなかったけれど、後になってそういうときのお母さん方がとてもイヤな思いをするらしいことを電話相談で聞いた…まだ受け入れられない状況の中ではそうなのだろうと…

出来ないと言ってしなくても良いものではなく、それでも努力していくと出来るようになるのがリハビリのすごいところで、完璧に出来ると言うことではないけれど、次男も難しかった洗濯ばさみをはめることが出来るようになった

病院を退院して週に1度の通院してのリハビリは、OTの場合、特に何と言うこともなく
毎日の生活で使うことがリハビリですから…至極当然のことを言われ、通院しなくなった

作品名:もやもや病 3 作家名:とことん