季節ものショートショート
月日は流れて、僕と彼女はすこし大人になった。
だけど、僕らの関係と、日常はほとんど変わらなかった。
それは、僕が小学校を卒業して、中学に入学してもそうだ。
変わったことといえば、彼女が部屋からあまり出なくなったくらいだ。
そうして毎日を過ごしていた。
僕と彼女が出会って、ちょうど七年目の夏のことだ。
その日は、はじめて出会った日と同じように、日差しが強かった。
彼女は突然、今まで一度も口にしなかったことを話し始めた。
まるで、禁忌のように、触れてこなかったことを。
そして、最後に、彼女はこう告げた。
「わたしね、もし成功したら、あなたに伝えたいことがあるの」
その日から、僕はずっと悩み続けた。
だけど、彼女の前ではわらい続けた。
だって僕は、もう二度と泣きそうな笑顔を見たくないから。
それから数日がたって、彼女は僕に、
「あした、成功するかわからないけど――」
彼女が言おうとしたことは、なんなのかわからない。
いや、わかりたくない。
わかりたくないから僕は、それ以上なにも言えないように、抱きしめた。
彼女はびっくりしながらも、うれしそうに、
「あなたって、ときどきとても卑怯ね」
そのとおりだ。
でも、僕はそれでかまわない。
だから僕は、とても卑怯な僕は、彼女に残酷なことをお願いした。
「僕も、君に伝えたいことがあるよ。だから、必ず――」
作品名:季節ものショートショート 作家名:空言縁